がんの障害年金・傷病手当金との調整

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傷病手当金と障害年金は同時にもらえる?
併給調整と返還の注意点

障害基礎年金だけの場合と、障害厚生年金を受ける場合では、傷病手当金の取り扱いが違います。

差額の計算と、障害年金が遡って決まったときの注意点を説明します。

傷病手当金をもらっているときに、障害年金が決まったらどうなるのでしょうか。「両方もらえるの?」「障害年金を請求したら損になるの?」と気になる方もいると思います。

傷病手当金と障害年金の関係は、意外にややこしいです。まずは、障害基礎年金だけを受ける場合と、障害厚生年金を受ける場合を分けて考えましょう。

傷病手当金と障害年金は、両方満額もらえる場合と調整される場合がある

年金の種類と傷病手当金の取り扱い
受け取る障害年金 傷病手当金との関係
障害基礎年金のみ 障害基礎年金を受けることによる調整はありません。それぞれの支給要件を満たせば、両方を受け取れます。
同じ傷病による障害厚生年金 傷病手当金が調整されます。年金の日額換算額が傷病手当金の日額より少なければ、差額が支給されます。
同じ傷病による障害厚生年金と障害基礎年金 障害厚生年金と障害基礎年金の合計額で、傷病手当金を調整します。
異なる傷病による障害厚生年金 その障害厚生年金との併給調整はありません。同じ傷病・関連する傷病に当たるかは保険者に確認するといいと思います。

障害基礎年金だけなら調整されないのに、同じ傷病の障害厚生年金も受けると、障害基礎年金の分まで含めて調整されます。

ここが、特にわかりにくいところです。減額・支給停止になるのは傷病手当金の側で、傷病手当金を受けているという理由で障害年金が減るわけではありません。

この表は、障害年金との調整について整理したものです。給与の支払いや、ほかの給付による調整がある場合は、別途確認が必要です。

まずは傷病手当金の金額と支給期間を確認

傷病手当金は、健康保険の被保険者本人が、業務外の病気やけがで療養のために働けず、十分な給与を受けられないときの生活を支える制度です。連続する3日間の待期を完成した後、4日目以降の働けない日が対象になります。

超簡単に言えば、給与のおおむね3分の2に当たる額を補う仕組みですが、実際の計算は手取り額ではなく、標準報酬月額を使います。

1日当たりの傷病手当金の基本的な計算

支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3

実際には所定の端数処理があります。支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、別の計算方法で確認します。

支給期間は、同じ傷病について支給開始日から通算1年6か月です。2022年1月から通算化されており、途中で復職して支給されない期間があった場合、単に暦で1年6か月が過ぎたから終了するという仕組みではありません。

詳しくは、協会けんぽの傷病手当金の案内をご確認ください。

年金額の古い例を、そのまま使わないようにしましょう

障害年金の額は毎年度改定されます。例えば、令和8年度の障害厚生年金3級の最低保障額は、年額635,500円です。

年金額が変われば、調整する金額も変わります。最新額は日本年金機構の障害厚生年金の案内で確認できます。

障害基礎年金だけなら、傷病手当金との併給調整はない

障害基礎年金のみを受け取る場合は、傷病手当金との調整はありません。傷病手当金の支給要件も満たしていれば、両方を受け取れます。

ただし、「障害基礎年金なら、どんな場合でも調整されない」と覚えると間違えやすいです。同じ傷病で障害厚生年金も支給される場合は、次の章のとおり、合計額で調整されます。

年金の種類の違いは、障害基礎年金と障害厚生年金の違いをご覧ください。

同じ傷病による障害厚生年金は、傷病手当金と調整される

傷病手当金と同じ病気やけがによる障害厚生年金を受けられる場合は、障害厚生年金が優先されます。傷病手当金は全額が必ずなくなるのではなく、年金の日額換算額との差額を確認します。

調整後の傷病手当金の日額

本来の傷病手当金の日額 − 調整対象となる障害年金の年額 ÷ 360

計算結果が0以下なら、傷病手当金は支給されません。

障害厚生年金と、同じ支給事由の障害基礎年金を受けるときは、両方の年額を合計して360で割ります。

障害厚生年金3級の例:傷病手当金は差額を受け取る

傷病手当金が日額8,500円、障害厚生年金3級が年額720,000円と仮定します。年金の日額換算額は720,000円 ÷ 360 = 2,000円です。

1日分の比較:合計8,500円
障害厚生年金
2,000円
傷病手当金の差額
6,500円

傷病手当金8,500円から障害年金の日額換算額2,000円が差し引かれ、傷病手当金6,500円と障害年金2,000円の合計8,500円になります。

障害基礎年金も受ける例:合計額で調整

傷病手当金が日額8,500円、障害基礎年金と障害厚生年金の合計年額が1,980,000円と仮定します。年金の日額換算額は5,500円となり、傷病手当金は3,000円です。

1日分の比較:合計8,500円
障害基礎年金+障害厚生年金
5,500円
傷病手当金の差額
3,000円

この場合は、障害基礎年金の分も含めて調整します。ここはややこしいですが、大事なところです。

年金の日額換算額のほうが多い場合

傷病手当金が日額4,000円、調整対象となる障害年金が年額1,800,000円(日額換算5,000円)なら、傷病手当金は全額支給停止です。障害年金はそのまま支給されます。

上の金額は仕組みを説明する仮定の例です。年金は年額を日額に換算して比較しており、実際に毎日振り込まれるわけではありません。給与やほかの給付がある場合の調整は省略しています。

一時金の「障害手当金」にも調整があるので注意してください。

障害年金が遡及支給されたら、傷病手当金の返還に注意

すでにもらった傷病手当金でも、後から返還が必要になることがあります。同じ傷病の障害厚生年金が過去に遡って決まり、傷病手当金を受けた期間と重なる場合です。

返還するのは、重なった期間に本来調整されるはずだった傷病手当金の分です。年金額や期間によって、一部または全額を返還することになります。

  1. 年金の支給決定が届く
    支給開始年月、年金額、遡及して支給される期間を確認します。
  2. 傷病手当金を支給した保険者から返還通知が届く
    協会けんぽや健康保険組合に、年金機構から障害年金が支給されたことが健康保険に自動的に通知されます。
  3. 返還額・手続きの案内を確認
    保険者から届いた返還通知の内容を確認し、案内に沿って返還します。

障害年金の遡及請求では初回振込で、過去の分が一括で支給されます。遡及期間によっては金額が大きくなることもあるので、障害年金が支給された後、返還通知が届くまで、返還分は使わずに残しておきましょう。

傷病手当金の受給中でも、障害年金の請求を検討しましょう

傷病手当金が減ると聞くと、「障害年金は、傷病手当金が終わってから請求したほうがいいのでは?」と思うかもしれません。でも、傷病手当金を受給中だからといって、障害年金を請求できないわけではありません。

傷病手当金には通算1年6か月の支給期間があります。一方、障害年金は、支給対象となる障害状態が続くなどの要件を満たす間、受給を続けられる制度です。

また、両者では審査する内容も違います。傷病手当金をもらえているから障害年金も必ずもらえる、ということではありません。

請求が遅れた分は取り戻せない

障害年金は請求しようと思ってから、審査を経て実際に支給されるまで、半年以上かかることもあります。そうなると、傷病手当金の支給期間が終わってから請求したら、障害年金を受給できるまで空白期間が生まれます。とくに、障害認定日には等級に該当せず、その後に症状が重くなって請求する「事後重症請求」は、原則として請求した月の翌月分からの支給です。請求を遅らせた期間が後から支給されるわけではありません。

書類の準備や審査にも時間がかかります。傷病手当金が終わる直前に慌てるより、障害年金の要件に該当するか、早めに確認しておいたほうがいいと僕は思います。

初診日や保険料納付要件も含めた請求の基本は、がんで障害年金をもらうための3つの要件、受給後の更新は、障害年金の支給期間と更新手続きをご覧ください。

「温存」のためだけに、傷病手当金の申請を見送らない

傷病手当金の申請時期は、給与や有給休暇の扱い、年金との調整、申請の時効などを含めて確認する必要があります。基本的には傷病手当金は金銭補償の第1選択肢になるので、会社から給与が支給されなくなり、労務不能が継続しているのであれば、すぐに請求しましょう。

特に退職を予定している方は、退職後の継続給付にも条件があります。在職中に傷病手当金を受けていること、または受けられる状態にあることが、条件の1つです。

まとめ

傷病手当金と障害年金は、年金の種類と、同じ傷病によるものかどうかで取り扱いが変わります。障害基礎年金だけなら併給調整はありませんが、同じ傷病の障害厚生年金も受けると、基礎年金を含めた合計額で傷病手当金を調整します。

障害年金を遡及請求する前に、すでにもらった傷病手当金の返還が必要になるかを確認しておきましょう。

調整されるからといって、最初から障害年金の請求を見送るのではなく、請求の準備は進めておきましょう。今の生活だけでなく、その後も見据えて、利用できる制度を確認していくことが大事だと思います。

参考資料

制度情報確認日:2026年10月28日。図の金額は説明用の仮定です。

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