がんの障害年金・認定日請求と遡及請求
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障害年金の遡及請求とは?がんの認定日請求と注意点
過去にさかのぼって受け取れる年金と、請求前に確認しておきたいこと。
診断書の準備、5年の時効、傷病手当金などの返還について説明します。
障害年金の請求は、ザックリ説明すると、障害認定日の状態で請求する「認定日請求」と、その後に症状が重くなってから請求する「事後重症請求」があります。
認定日請求では、過去にさかのぼって年金を受け取れる場合があります。これが、一般に「遡及請求」と呼ばれるものです。
ただし、さかのぼって受け取れる年金は、原則として5年分までです。また、遡及分が支給されることで、傷病手当金などの返還が必要になる場合もあります。今回は、請求の方法と、請求する前に確認しておきたいことを説明します。
障害年金の遡及請求とは?事後重症請求との違い
障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。その前に症状が固定した場合などは例外があります。がんと診断された日から数えるとは限らないので、まずは初診日と障害認定日を確認します。
| 比べるところ | 障害認定日による請求 | 事後重症による請求 |
|---|---|---|
| 確認する障害状態 | 障害認定日に、対象となる等級の状態だったか。 | 障害認定日には該当せず、その後に対象となる状態になったか。 |
| 年金の支給開始 | 原則として障害認定日の翌月分から。過去の支給分には時効があります。 | 請求した月の翌月分から。症状が重くなった時点まで自動的にさかのぼるものではありません。 |
| 請求時期の注意 | 認定日を過ぎてから請求できます。5年を超える過去の年金は原則として受け取れません。 | 原則として65歳の誕生日の前々日までに請求が必要です。老齢基礎年金を繰上げ受給している場合などにも制限があります。 |
がんのステージや病名だけで決まるのではなく、その時点の症状や治療の副作用、日常生活や仕事の状況などを確認します。初診日がはっきりしない場合は、初診日の確認と証明方法もご覧ください。
遡及請求には、いつの診断書が必要?
障害認定日から1年以上経過して請求するときは、原則として、認定日頃と請求時点の2つの診断書が必要になります。大事なのは、診断書を書いてもらう日ではなく、いつの状態を記載してもらうかです。
| 診断書 | 記載する障害状態 |
|---|---|
| 障害認定日頃 | 障害認定日以後3か月以内の現症。20歳前傷病などでは取り扱いが異なる場合があります。 |
| 請求時点 | 請求日前3か月以内の現症。認定日と請求日が1年以上離れている場合に、原則として併せて提出します。 |
カルテや検査結果などから、当時の状態を記載してもらえるかを医療機関に確認します。記憶だけで、過去の診断書を書いてもらえるわけではありません。途中の病状を確認するため、追加の診断書や資料を求められる場合もあります。
5年の時効は、「請求できるのは発症から5年以内」という意味ではありません
障害認定日から5年以上経っていても、当時の障害状態などを確認できれば、認定日請求を検討できます。ただし、支給される過去の年金には5年の時効がある、ということです。
例えば、障害認定日が7年前でも、7年分すべてを受け取れるとは限りません。請求が遅れるほど受け取れない月が増えることがあるので、資料を集められる見込みがあれば、早めに準備したいところです。
認定日請求と事後重症請求は、あわせて準備できます
認定日頃にも対象となる障害状態だった可能性があり、現在も症状が重い場合は、認定日請求が認められなかった場合の事後重症請求も含めて検討します。
認定日請求が認められなかった場合に備え、以前は「障害給付 請求事由確認書」を添付していました。現在の請求書には「事後重症請求に関する確認事項」の欄が設けられています。認定日請求で受給権が発生しない場合に、事後重症請求を希望するかを記載し、必要な診断書も用意します。
古い書類をそのまま使わず、日本年金機構が公開している最新の様式を確認してください。年齢や繰上げ受給などにより、事後重症請求ができない場合もあります。
現在のほうが重い場合は、額改定請求も検討する
認定日頃は3級、現在は2級が考えられる場合など、当時より今の状態が重くなっていることもあります。このような場合は、額改定請求を同時に提出するかも確認したいところです。
これは、認定日請求が認められるかどうかとは別に、請求時点の等級をどう扱うかという問題です。請求時点の等級についての不服申立てにも関わるため、書類を出す前に、想定する等級と手続きを整理します。額改定請求の時期には制限もあるので、すべての方が一律に提出するということではありません。
がんの遡及請求では、何年も前の生活や治療の状況を詳しく確認する必要があります。僕は、過去の状態を伝える難しさを感じることがあります。ただ、「遡る期間が長いから認定基準が厳しくなる」というわけではないので、当時の状態がわかる記録を丁寧にそろえることが大事だと思います。
障害認定日には重かったけれど、今は軽快している場合
現在は症状が軽くなっていても、障害認定日当時に対象となる障害状態であれば、過去の分を受け取れる場合があります。
ただし、現在の状態や、途中でいつ軽快したのかによって、支給される期間と支給停止の時期は変わります。「過去の分だけ支給され、必ず請求月の翌月から停止される」とは限りません。途中の診療記録や追加の診断書などで確認されることもあります。
いったん支給停止になった後、再び症状が重くなったときは、「支給停止事由消滅届」を年金事務所に提出します。新しく事後重症請求をする場合と同じ手続きではありません。
ご本人が亡くなられた後でも、遡及請求はできる?
ご本人が請求しないまま亡くなられた場合でも、生前の障害認定日に受給権が発生していたと認められれば、ご遺贈の方が未支給年金を受け取れる可能性があります。
ご本人が亡くなられた後に、新たに事後重症請求をすることはできません。生前に要件を満たしていた認定日請求と、本人の請求によって受給権が発生する事後重症請求は、分けて考える必要があります。
未支給年金を請求できるのは、亡くなられた当時にご本人と生計を同じくしていた、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の3親等内の親族です。順位もこの順番です。相続人なら誰でも請求できるということではありません。
当時の診断書や初診日の証明に加え、続柄や生計同一関係の確認なども必要になります。手続きが複雑になるので、年金事務所や社会保険労務士に相談したほうがいいかもしれないです。
遡及分が振り込まれたら、ほかの給付の返還に注意!!
遡及請求が認められると、過去の年金がまとめて振り込まれます。例えば、年額200万円の年金が3年分認められたとすれば、単純計算で600万円です。実際には年度ごとの年金額に変動があるので、金額は毎年度毎年度ごとに異なります。
まとまった金額が振り込まれるのは嬉しいことですが、同じ期間に別の給付を受けていると、後から返還を求められる場合があります。ここは注意しましょう。
| 受けていた給付 | 確認すること |
|---|---|
| 傷病手当金 | 同じ傷病による障害厚生年金との調整。障害基礎年金も受ける1,2級の場合は合算した年金額で確認します。 |
| 児童扶養手当 | 年金の種類、子の加算、対象月、所得による制限などを自治体に確認します。 |
| 労災保険の年金等 | 同じ事由の給付かどうか、労災側の調整や過去の支給分の扱いの確認が必要です。 |
傷病手当金は、障害厚生年金との「差額」を確認
同じ傷病による障害厚生年金を受ける場合、傷病手当金は調整されます。障害基礎年金だけを受ける場合は、この障害厚生年金との併給調整の対象にはなりません。
調整には、障害厚生年金の年額を360で割った額を使います。同じ支給事由の障害基礎年金も受ける場合は、その年額も合算します。年金の日額相当額より傷病手当金の日額が高ければ、差額が支給されます。実務では傷病手当金の金額のほうが高いことがほとんどです。
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上の例で傷病手当金8,500円をすでに受け取っていれば、重複した支給対象日について、1日5,500円の返還が生じる計算です。仮に対象が30日なら16万5,000円です。実際の返還額は、対象日数、年金額の改定やほかの調整などを保険者が確認して決めます。
遡及請求の場合、返還の案内が年金の振込みより後になります。返還額を確認するまでは、その分のお金を残しておくことが大切です。詳しくは、傷病手当金と障害年金は同時にもらえるの?もご覧ください。
児童扶養手当は、年金の種類と支給対象月で確認
児童扶養手当は、ひとり親家庭などを支える制度です。公的年金との調整がありますが、障害年金が支給されたから、手当をすべて返すと決まるわけではありません。
令和3年3月分から、障害基礎年金等を受ける方については、児童扶養手当額と年金の子の加算額との差額を受けられる取り扱いになっています。障害厚生年金のみの場合などとは扱いが異なり、所得による制限もあります。
遡及する期間が制度改正の前後にまたがる場合もあります。いつの月について、いくら調整されるのか。自治体の担当窓口に確認し、返還が必要な額を整理してください。
労災保険の障害補償年金などを受けていた場合
同じ事由による労災保険の年金と障害年金を受ける場合は、原則として障害年金が全額支給され、労災側の給付が調整されます。遡及分についても、重複した期間の給付の調整が必要になる場合があります。
また、20歳前傷病による障害基礎年金には、障害年金が支給停止されます。
| 項目 | 準備・確認するもの |
|---|---|
| 遡及する年金 | 認定日頃の等級の見込み、年度ごとの年金額、支給対象月。 |
| 傷病手当金 | 支給決定通知、対象日、日額、加入している保険者の案内。 |
| 児童扶養手当・労災給付 | 支給内容と対象期間、各窓口での調整・返還額の確認。 |
| 手元に残る金額 | 年金の遡及分から返還見込額と請求にかかる費用を差し引いて確認。 |
決定してから「返還が多いので、遡及請求をしなかったことにしたい」と考えても、簡単に取り消せるものではありません。だからこそ、書類を提出する前の確認が大事です。不服申立てや請求の扱いは、個別に確認する必要があります。
年金が認められるかどうかだけでなく、その後の生活にどのような影響があるのかまで、一緒に考えてくれる専門家に相談していただきたいと僕は思います。
まとめ
障害年金の遡及請求では、障害認定日当時の状態を確認できる診断書や資料が大事になります。現在の状態が当時より重い場合、逆に軽快している場合などで、準備する手続きも変わります。
もう一つ忘れてはいけないのが、ほかの給付の調整です。遡及分の年金額だけを見ず、傷病手当金や児童扶養手当などの返還がないかを確認しましょう。
あとになって困らないよう、請求の可能性と、お金の動きの両方を整理する。遡及請求では、この準備がとても大事だと思います。
参考資料
制度情報確認日:2026年10月28日。
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