障害年金の額改定請求
症状が重くなった場合の
額改定請求について
公開日:
次の更新まで待たずに、年金額の見直しを求める方法があります。
請求できる時期と、準備する書類を具体例で説明します。
障害年金を受給している人の症状が重くなった場合は、上位の等級への変更を求める「額改定請求」ができます。
有期認定の場合、年金証書などに次回の診断書提出年月が記載されています。がんの場合、次の更新までに病状や治療の内容が変わることもあります。症状が重くなったときに、次の更新まで必ず待たなければならないわけではありません。
額改定請求が認められると、原則として請求した月の翌月分から年金額が増えます。ただし、いつでも請求できるわけではなく、前回の請求や更新の結果によって、請求できる時期が違います。
今回は、この少しわかりにくい額改定請求ついて、具体例を使って説明します。
障害年金の額改定請求とは
額改定請求は、すでに障害年金を受給している方が、症状が重くなったことを理由に年金額の見直しを求める手続きです。例えば、障害厚生年金の3級から2級、障害基礎年金の2級から1級への変更などが対象になります。
症状が悪化しただけで、自動的に上の等級になるわけではありません。現在の病状や、日常生活・仕事にどのような支障が出ているかを診断書で伝え、上位等級の認定基準に該当するか審査を受けます。
現在、支給停止中の方は手続きが違う場合があります。
障害の程度が軽くなったために障害年金の全額が支給停止されている場合は、通常、額改定請求ではなく「支給停止事由消滅届」を検討します。まず、いま受給している状態か、支給停止中かを確認してください。
額改定請求ができる時期
原則として、障害年金の受給権が発生した日、または前回の診査日から、1年を経過した日の翌日以後に請求できます。
ここで大事なのは、「年金証書が届いた日」や「年金が初めて振り込まれた日」から数えるわけではないということです。どの日が起点になるかを、次のケースで確認しましょう。
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診査日については、後の章で説明します。
① 障害認定日請求で受給権を取得した場合
障害認定日請求で受給権を取得した場合は、障害認定日から1年を経過した日の翌日が基本になります。
| 起点となる日 | 額改定請求が可能な日 |
|---|---|
| 障害認定日:2025年4月15日 | 2026年4月16日以後 |
最初に障害年金を請求した日ではなく、受給権を取得した障害認定日が起点です。その後に額改定などの診査を受けていれば、その日も確認します。
② 事後重症請求で受給権を取得した場合
事後重症請求の場合は、裁定請求日(年金事務所に請求書類を提出した日)が受給権発生日となります。その日から1年を経過した日の翌日から、額改定請求ができます。
| 起点となる日 | 額改定請求が可能な日 |
|---|---|
| 裁定請求日:2025年5月23日 | 2026年5月24日以後 |
③ 遡及して障害認定日請求をした場合
障害認定日の診断書と、請求時点の診断書を提出して遡及請求した場合は、それぞれの時点で認められた等級を確認します。請求時点の状態が審査されていても、それを一律に「事後重症請求」と考えると、起点の日を間違えることがあるので注意が必要です。
| 認定結果の例 | 次の額改定請求の考え方 |
|---|---|
| 障害認定日も請求時点も3級 | 障害認定日が2024年4月15日、裁定請求日が2025年5月23日で、別途額改定の処分などがない場合。すでに受給権発生日から1年を経過しているため、決定後、いつでも額改定請求ができます。 |
| 障害認定日は2級、請求時点は3級に改定 | 請求時点の診断書の現症日が2025年5月1日で、その日を診査日として職権による改定が行われた場合。2026年5月2日以後に額改定請求ができます。 |
等級が変わった場合は、裁定請求日ではなく、診断書の現症日が起点になることに注意してください。
④ 更新により減額改定された場合
障害状態確認届(更新)により等級が下がった場合は、減額が始まった月と、額改定請求の起点となる診査日を分けて考えます。
| 確認する日付 | 日付の例 |
|---|---|
| 更新の診断書提出期限 | 2025年4月30日 |
| 減額改定に係る診査日 | 2025年7月1日 |
| 減額される年金の開始月 | 2025年8月分から |
| 次に額改定請求ができる日 | 2026年7月2日以後 |
この例では、減額された8月から1年を数えるわけではありません。起点になるのは7月1日の診査日です。減額された結果そのものに納得できない場合は、症状の悪化による額改定請求とは別に、審査請求などの不服申立ても検討します。
⑤ 更新により増額改定された場合
更新で等級が上がった場合の診査日は、原則として診断書提出期限の属する月の初日です。
| 確認する日付 | 日付の例 |
|---|---|
| 更新の診断書提出期限 | 2025年4月30日 |
| 増額改定に係る診査日 | 2025年4月1日 |
| 増額される年金の開始月 | 2025年5月分から |
| 次に額改定請求ができる日 | 2026年4月2日以後 |
このケースでは、さらに病状が重くなり、1級に該当する状態になったときに、次の額改定請求を検討します。
⑥ 更新により等級が変わらなかった場合
更新で同じ等級のまま支給が続いた場合は、その更新は、額改定請求の1年の待機期間を数え直す「診査」には当たりません。そのため、更新したことだけを理由に、さらに1年待つ必要はありません。
| 更新の結果 | 額改定請求が可能な時期 |
|---|---|
| 2026年4月末の更新後も3級を継続 | それ以前の受給権発生日や診査日から1年経過していれば、いつでも額改定請求ができます。 |
⑦ 額改定請求をしても増額が認められなかった場合
額改定請求をした結果、上位等級に該当しないとして年金額が変わらなかった場合は、その額改定請求の受付日が診査日になります。原則として、そこから1年を経過した日の翌日以後に、次の額改定請求ができます。
| 前回の額改定請求の受付日 | 次に請求できる日 |
|---|---|
| 2025年5月23日 | 2026年5月24日以後 |
更新で同じ等級だった場合とは、ここが違います。なお、請求が「却下」となった場合は、上記の診査日に含まれないです。
例外:1年を待たずに額改定請求できる場合
厚生労働省令に定める、障害の程度が重くなったことが明らかな特定の状態に該当する場合は、1年を待たずに額改定請求ができることがあります。
ただし、「がんが進行した」「ステージが上がった」という理由だけで、この例外に当たるわけではありません。具体的な障害の状態や、現在受けている等級、一定期間その状態が続いているかなどを確認します。
| 状態の例 | 確認する条件 |
|---|---|
| 喉頭をすべて摘出した | 請求時に障害厚生年金3級である場合など、チェックシートの条件を確認します。 |
| 人工透析を受けている | 3か月を超えて継続していること。請求時の等級は3級が対象です。 |
| 人工肛門と、尿路変更などの障害が重なった | 組み合わせや、それぞれの状態が6か月を超えて続いているかなどの条件があります。人工肛門だけで一律に対象になるわけではありません。 |
上の表は一部の例です。対象となるすべての状態や詳しい条件は、日本年金機構の「1年を待たずに額改定請求を行う場合の記入上の注意事項」で確認してください。旧法の障害年金を受給している方は、別の資料で確認が必要です。
65歳以後の額改定請求
障害厚生年金3級を受給している方は、65歳以後の取扱いに注意が必要です。
65歳になるまでに、同じ支給事由による障害基礎年金の受給権を一度も有していなかった方は、原則として65歳以後に額改定請求をすることができません。
現在3級でも、それまでに同じ病気による障害基礎年金の受給権があった方は、扱いが異なります。
また、老齢基礎年金を繰上げ請求している場合は、繰り上げ請求した時点で額改定請求をすることができなくなります。
65歳が近い方は、早めに確認してください。
65歳の誕生日の前々日までに2級以上に該当する状態になっている場合は、期限に間に合うよう手続きを検討する必要があります。診断書の準備にも時間がかかるので、注意しましょう。
額改定請求の書類と手続き
額改定請求をすること決めたら、医師に診断書を依頼し、額改定請求書とあわせて提出します。
| 行うこと | 確認する内容 |
|---|---|
| 請求できる時期を確認 | 年金証書・変更通知書などを用意し、受給権発生日や前回の診査日を確認します。 |
| 医師に診断書を依頼 | 請求日前3か月以内の現症日の診断書を準備します。症状の悪化と、生活・就労への影響を伝える書類を自身で作成して年金事務所に提出するのがいいと思います(義務ではないです)。 |
| 額改定請求書と診断書を提出 | 年金事務所または街角の年金相談センターへ。障害基礎年金のみの場合は、市区町村の窓口でも提出できます。 |
| 審査結果を確認 | 上位等級が認められた場合は、請求月の翌月分から増額されます。額改定請求が認められなかった場合は年金額は変わりません。 |
様式は、日本年金機構の「障害の程度が変わったとき」から確認できます。更新の診断書が届いている時期に額改定請求をする場合は、届いた用紙を処分せず、あわせて提出する書類を窓口で確認してください。
がんの場合、同じ治療を受けていても、副作用や生活への影響は人によって違います。前回と比べて何ができなくなったか、どのくらい家族の手助けが必要になったかなどを、具体的に医師へ伝えることが大切だと思います。
認定基準についてはがんの障害年金の認定基準、更新の手続きについては障害年金の支給期間と更新手続きもご覧ください。
まとめ
症状が重くなったとき、次の更新まで待つ必要があると思っている方もいるかもしれません。しかし、請求できる時期に達していれば、額改定請求という方法があります。
額改定請求で特に大事なのは、どの日を起点に1年を数えるかということです。最初の請求、遡及請求、更新、前回の額改定請求では、確認する日が違います。
また、額改定が認められた場合の増額は、原則として請求月の翌月分からです。「次の更新まで待とう」と思う前に、ご自身がいつから請求できるのかを確認していただきたいと思います。
参考資料
制度情報の確認日:2026年10月26日。日付の例は説明用です。個別の診査日は年金記録により確認します。
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