現在、働いているひとから、「働いているけど障害年金はもらえますか?」という質問はよく受けます。この答えは、「そうともいえる」けど「そうともいいきれない」というのが私の答えです。いきなり、玉虫色ですいません。
今回は、就労とがん障害年金にフォーカスして、この微妙な関係を解説していきます。
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就労と障害年金の関係
「年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)平成26年」(厚生労働省)によると、就労世代と言われる65歳未満の障害年金受給者の就労状況は、「仕事あり」が35.1%、「仕事なし」が61.1%となっています。
「仕事あり」の35.1%を雇用形態別に見ると、常勤の会社員・公務員等が7.4%、臨時・パート等が7.3%、障害福祉サービス事業所等が10.1%、となっています。障害福祉サービス事業所が多くなっているのは障害者の就労を支援する就労移行支援制度により、障害者が障害福祉サービス事業所で、一般企業で仕事するための訓練をしている方が多いからだと思います。
常勤としてフルタイムで仕事をしている障害年金受給者はわずか7.4%とかなり少ないといっていいと思います。
外部障害の障害認定基準
認定基準がはっきりしている外部障害(手足の障害や視覚・声の障害など)は、数値や機能により明確な障害認定基準があるので、認定基準を満たすことにより働いていても障害年金の受給の可否や障害等級に影響があることは少ないといえるでしょう。例えば、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準における第7節、肢体の機能の障害より、障害の状態を例示しているところでは、次のように示されています。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 1.一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの 2.四肢の機能に相当程度の障害を残すもの |
2級 | 1.一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの 2.四肢に機能障害を残すもの |
3級 | 一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの |
例示されているような状態であれば、車椅子に乗ることにより働くことができても、障害年金が認められます。障害認定にあたり、就労はほとんど影響がないといっていいと思います。
がん障害年金認定基準
がんでの障害年金の認定基準は国民年金・厚生年金保険 障害認定基準における第16節の「悪性新生物による障害」により次のように規定されています。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常のほとんどがベッドでの生活と同程度以上と認められる状態であって、日常生活がおおむね寝たきり程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、必ずしも家族の助けを借りる必要はないが、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
がんでの認定基準をわかりやすく解説で詳しく解説していますが、がんは内部障害(外見からではわからない障害)のため、外部障害と違い、明確にこの状態になったら障害年金が認められるという認定基準はありません。3級の認定基準では、「労働が著しい制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする」状態でなければなりません。1.2級はそれ以上の障害状態でなければならないので、正直、フルタイムでいままでと変わらず働いている人のがん障害年金受給は難しいと言わざるを得ません。
雇用されていてもがん障害年金はもらえます!!
フルタイムでいままでと変わらず働いている人が、がん障害年金受給が難しいとことは説明しました。
しかし、雇用されていても障害年金をもらえる人はいます。実際、私もフルタイムの条件で雇用されていましたが、障害年金2級を受給していました。
「がん患者の就労実態」のなかの、がんになった場合の就労の変化を見ていただけるとわかると思いますが、がんになっても休職をしながらも、雇用は継続されていて復職を目指す人が多いのがわかります。「病気に伴う長期休業をしながらも、復職・継続した」が32.9%、現在休職中が11.1%となっています。休職はがんの症状、治療または治療の副作用により働けないから休職しています。ということは、がんにより「労働に著しい制限を受ける」ことになるので、がん障害年金の3級の認定基準にあてはまります。それだけでなく、日常生活が著しい制限を受けている可能性も否定できなくなり、2級以上の可能性も出てきます。
私自身もがんで障害年金を請求したときは休職中でした。
新型コロナウイルスの影響でリモートワークが普及しましたが、出社していた人が、がんの影響で出社できないため、リモートで特別に働いているということでも、「労働に著しい制限を受ける」に該当する可能性があるので、ぜひ、諦めずにご相談ください。
がんになる前は正規雇用で働いている人が多い
がんで障害年金を請求する人は、他の傷病で障害年金を請求する人に比べて、初診日時点では、正社員として働いている人が多いです。それは、初診日が厚生年金の人が多いということを意味します。正社員であれば、福利厚生が非正規雇用に比べて手厚く、休職や傷病休暇などがある場合が多いです。この点は他の傷病で障害年金を請求する人とは異なります。
「がんと障害年金」のなかでも紹介しましたが、がんで障害年金を受給している人は、ほんとに少ないです。初診日が厚生年金ということは、障害厚生年金の受給資格があり、障害等3級があり受給の可能性が出てきます。がん患者はもっと障害年金を受給するべきです。
障害年金と退職後の雇用保険の関係
退職後の雇用保険(失業保険)をもらっていると障害年金の受給審査に影響があるのか?
又は、障害年金を受給していると退職後の雇用保険(失業保険)はもらえるのか?
日本年金機構とハローワークは情報共有できていて、互いにどちらかを受給している場合はその情報を知ることができます。
がんで障害年金を受給している場合は、基本的には労働に制限を受けている状態だと考えられます。
詳しくは「がんでの認定基準をわかりやすく解説」を参照してください。
また、雇用保険を受給しているということは「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力がある」と判断される可能性があります。
障害年金と退職後の雇用保険は制度上は同時に受け取ることができます。しかし、障害年金を受給しているときに退職後の雇用保険を申請した場合は、働けるという医師の診断書を求められることがあります。そして、医師からの働けるという診断書を書いてもらい雇用保険を受給した場合は、次回の障害年金更新時に認められない可能性が出てくるでしょう。
その逆で、雇用保険を受給している人が障害年金の申請をした場合は、障害年金の審査でマイナスになることが考えられます。
この点を理解したうえで、障害年金と雇用保険はよく考えて請求手続きをすることをおすすめします。
まとめ
近年、がん治療薬は分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などのいままではなかった、新しい薬が開発され、これまでは長期生存が難しかった難治がんのステージ4のがん患者でも長期に生きる人が多くなってきました。がんとの闘病では休職制度等を使いながら仕事を継続しているケースも増えてきました。
根治が難しい方の場合、自分らくしくどう生きるかは、人それぞれであり、時間をどう使うかは人生の選択です。
仕事こそが自分の生きがいであれば、亡くなる直前まで働けるサポートを私はします。
家庭と仕事、両方大事であれば、どちらの時間も作ることができるよう私はサポートします。
仕事より、家庭や趣味が大事であれば、なるべくそちらの時間を作れるよう、私はサポートします。
休職制度、障害年金、傷病手当金、雇用保険等をうまく使うことにより、がん患者が自分らしく生きる時間を私は創りたいと思っています。
そのお手伝いができることを願っています。
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