障害年金の不服申立て

公開日:2026年10月24日

障害年金の不服申立て
審査請求・再審査請求の流れと期限
不支給や障害等級の決定に納得できないときの手続きを、図と表で整理しました。
申立先・期限・準備する資料、がんで再請求をあわせて検討するときの考え方を解説します。

障害年金の決定に納得できないとき

障害年金は、請求すれば必ず受給できるわけではありません。障害等級についても、希望どおりの等級になるとは限りません。では、審査結果に納得がいかない場合はどうすればいいのでしょうか。今回は、障害年金の不服申立てについて解説します。
不支給の決定や認定された障害等級などに不服がある場合、まずは社会保険審査官への「審査請求」を検討します。その決定にも不服がある場合は、社会保険審査会への「再審査請求」をすることができます。

最初に確認したいのは、通知書と申立ての期限です。決定通知を受け取った日を記録し、通知書・封筒・請求時の書類の控えを保管してください。

不支給理由を確認するための保有個人情報開示請求

審査請求書を作成する前に、まず「なぜ不支給になったのか」を確認します。当事務所では、その判断の手掛かりとなる認定調書(障害状態認定調書・障害状態認定表など)を取得するため、厚生労働省に「保有個人情報開示請求」を行うことがほとんどです。

認定調書を取得する理由

不支給決定通知書だけでは、認定医がどのように判断したのか、十分にわからないことがあります。認定調書には、認定医が不支給と判断した理由や判断の手掛かりが、簡潔に記載されていることがあります。記載は少しだけの場合もあり、詳しい理由がすべてわかるとは限りません。それでも、診断書や検査結果、障害認定基準と照らし合わせ、何を争点にするかを検討するための大切な資料になります。
ここでは、厚生労働省へ書面で開示請求し、認定調書などの写しを受け取る場合の流れを紹介します。

認定調書を取得するまでの流れ
手順 行うこと・確認すること
1.対象となる請求・決定を確認する 年金の請求日、提出した年金事務所、不支給決定の通知日などを整理し、取得したい認定調書がどの請求に関するものかをきちんと整理します。
2.開示請求書と添付書類を準備する 厚生労働省の「保有個人情報開示請求書」に、認定調書を含む対象の審査資料が特定できるよう記載します。本人確認書類等も準備します。代理人が請求する場合は委任状も確認します。
3.厚生労働省へ提出する 書面の請求では、原則として対象の行政文書1件につき300円分の収入印紙を貼り、添付書類とともに厚生労働省の担当部署へ郵送します。対象資料や提出先に迷う場合は、提出前に担当窓口へ確認しましょう。
4.開示決定の通知を確認する 開示・不開示の決定は原則30日以内ですが、補正に要した日数は含まれず、期限が延長される場合もあります。「30日以内に資料が手元に届く」という意味ではありません。
5.開示の実施を申し出る 通知の内容に従い、原則として通知があった日から30日以内に「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」が郵送されますので、申出書に必要事項を記入し、写しの交付・送付などの希望を伝えます。郵送を希望する場合は、通知で案内された郵送料(切手代)も同封し、申出書を担当部署に郵送します。
6.認定調書を読み、争点を整理する 届いた認定調書を、請求時の診断書・申立書や認定基準と照合します。不支給の判断理由、事実との食い違い、追加で必要な資料を整理し、審査請求書の作成につなげます。

請求対象の記載例:「○年○月○日に○○年金事務所へ提出した障害年金裁定請求について、○年○月○日付の不支給決定に係る認定調書(障害状態認定調書・障害状態認定表)および審査に関する資料」。

開示請求をしても、障害年金の審査請求の期限が自動的に延びるわけではありません。審査請求は原則として、処分を知った日の翌日から3か月以内です。開示資料を待って期限を過ぎないよう、開示請求と並行して審査請求の準備を進めます。期限が近い場合は、資料の取得を待たずに、提出方法や理由・資料の補充について社会保険審査官等へ早めに確認してください。

書類・提出方法の詳細:厚生労働省「開示・訂正・利用停止請求の流れ」、保有個人情報開示請求書・記載上の注意(PDF)。開示対象に不開示情報が含まれる場合は、その部分が開示されないこともあります。

不服申立ての流れを図で確認

最初の裁定請求の決定に対し、審査請求、さらに再審査請求という手順があります。どこへ、いつまでに申し立てるのかを整理しました。

障害年金の不服申立ての流れ。決定を知った日の翌日から3か月以内に社会保険審査官へ審査請求。その決定にも不服があれば、決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に社会保険審査会へ再審査請求。訴訟は再審査請求を経ない選択肢もあります。
不服申立ての主な流れ。画像を押すと拡大できます。

図は基本的な手順です。すべての方が再審査請求や裁判まで進む必要はありません。不服の内容、提出資料、現在の病状などを確認し、それぞれの手続に進む準備をします。

審査請求・再審査請求の申立先と期限

審査請求と再審査請求の違い
手続き 申立先・判断する機関 申立ての期限
審査請求 地方厚生(支)局の社会保険審査官 処分(決定)があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内
再審査請求 厚生労働省の社会保険審査会 審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内

社会保険審査官は、各地方厚生(支)局に置かれ、担当する審査官が1人で判断します。社会保険審査会では、複数の委員による合議で審理し、裁決します。再審査請求の結果は「決定」ではなく「裁決」と呼びます。
審査請求は文書または口頭で行うことができます。ただし、口頭にも所定の手続きがあり、電話で不満を伝えるだけで済むものではありません。審査請求書には処分の通知書の写しを添付します。

出典:日本年金機構「年金の決定に不服があるとき(審査請求)」、近畿厚生局「審査請求に関するよくあるご質問(制度編)」。

再審査請求をせずに訴訟を検討することもできます

決定の取消しを求める訴訟は、原則として審査請求の決定を経た後に提起できます。再審査請求を経ずに訴訟を起こす選択肢もあります。出訴期間などは不服申立てと別に定められているため、訴訟を検討する場合は、通知書と決定書を用意して弁護士等に早めに確認してください。

審査請求・再審査請求で大切なこと

当事務所でも、裁定請求の結果に問題があると判断した場合には、審査請求や再審査請求を検討します。ただ「納得できない」と伝えるだけで、一度決まった内容が変わるわけではありません。
不支給決定などの理由を確認し、争点を明確にすること。その争点に対し、客観的な資料を積み上げ、論理的に説明することが重要です。

不服申立てに向けて整理しておきたいこと
確認すること 準備のポイント
どの決定に不服があるか 不支給、障害等級が思っていたのと違うなど、変更を求める内容をはっきりさせます。
なぜその決定になったか 通知書、請求時の診断書・申立書などを確認し、判断の理由と争点を整理します。
どの資料で説明するか 当時の診療記録、検査結果、日常生活・就労状況など、争点を裏付ける資料を検討します。
いつの状態を争うか 元の決定で判断された時点の状態と、その後の悪化を区別して整理します。
いつまでに提出するか 期限を最優先で確認し、資料の準備や提出方法を相談します。

審査請求には口頭意見陳述の仕組みがあります。再審査請求でも審理期日に意見を述べることができ、請求人や代理人は、審査長の許可を得て原処分をした保険者に質問することができます。感情的な言い争いではなく、事実と資料に沿って説明する準備が大切です。

制度の根拠:社会保険審査官及び社会保険審査会法。

審査請求と再審査請求で認められる割合

一度下された決定を覆すことは、簡単ではありません。では、障害年金の不服申立てはどのくらい行われ、請求人の主張はどのくらい認められているのでしょうか。令和5〜7年度の公表資料から、審査請求と再審査請求の状況を見ていきます。

ここでは、まず全体のうち障害年金に関する案件が占める割合を確認し、次に全制度の決定・裁決状況と、請求人の主張が認められた件数・割合を整理します。

表の対象範囲

審査請求は関東信越厚生局管内、再審査請求は社会保険審査会の全国集計です。対象地域と手続きの段階が異なります。また、障害年金に関する件数は公表資料の「障害給付」「障害関係」を使用しており、がんだけを集計した数字ではありません。

審査請求では、障害年金に関する案件はどのくらいある?

まずは、最初の不服申立てである審査請求です。関東信越厚生局管内の決定件数から、厚生年金保険・国民年金の「障害給付」に関する件数を抜き出しました。

割合=障害給付の決定件数÷全制度の決定件数×100。分子・分母ともに取下げは含みません。出典:関東信越厚生局「事業年報(令和7年度)」本文167〜181ページ。障害給付は厚生年金保険・国民年金の合算です。

令和7年度は、全制度の決定2,416件のうち、障害給付に関するものが1,633件で、67.6%を占めています。障害年金に関する審査請求が、決定された案件の大きな割合を占めていることがわかります。ただし、これは「障害年金の審査請求が認められた割合」ではありません。

なお、令和7年度の障害給付に関する容認は、厚生年金保険・国民年金を合わせて47件でした。そのうちの1件は当事務所の案件です。

審査請求の決定状況(関東信越厚生局・全制度)

次に、関東信越厚生局管内の審査請求全体の結果を確認します。こちらの表には、障害年金のほか、厚生労働省が管轄する健康保険や老齢年金などに関する案件も含まれています。

  • 容認:請求人の主張が認められ、元の処分が取り消されるなどしたもの。
  • 棄却:内容を審理した結果、請求人の主張が認められなかったもの。
  • 却下:請求の要件を満たさないため、内容の審理に入らず退けられたもの。

表が画面に収まらない場合は、横にスクロールしてご覧ください。

審査請求の決定状況(関東信越厚生局・全制度)
年度 容認 棄却 却下 取下げ 請求人の主張が認められた件数・割合容認+変更による取下げ
令和5年度 161件 1,392件 142件 188件処分変更かどうかは不明 ー
令和6年度 141件 1,747件 148件 131件処分変更かどうかは不明 ー
令和7年度 105件 2,163件 148件 164件処分変更かどうかは不明 ー

出典:関東信越厚生局「事業年報(令和7年度)」本文167・172・177ページ。

審査請求では、審査官の決定前に保険者が元の処分を変更し、請求人が取り下げる場合もあります。そのため、容認の件数だけでは、主張が認められた結果のすべてを捉えられません。

ただし、この年報では、取下げ総数のうち原処分変更によるものが何件かは確認できません。取下げ全件を「主張が認められた件数」に加えることはせず、合算件数・割合は「ー」としています。「ー」は0件・0%という意味ではありません。

再審査請求では、障害年金に関する案件はどのくらいある?

続いて、社会保険審査会による再審査請求です。こちらは全国の裁決件数から、厚生年金保険・国民年金の「障害関係」に関する件数を整理しました。

割合=障害関係の裁決件数÷全制度の裁決件数×100。分子・分母ともに取下げは含みません。出典:厚生労働省「社会保険審査会 制度別受付・裁決状況」。障害関係は厚生年金保険・国民年金の合算です。船員保険の障害年金は、3年度とも裁決0件です。

令和7年度は、全制度の裁決1,331件のうち、障害関係が1,084件で、81.4%を占めています。再審査請求の裁決でも、障害年金に関する案件が大きな割合を占めています。この割合も、主張が認められた割合とは異なります。

再審査請求の裁決状況(社会保険審査会・全制度)

社会保険審査会の統計では、取下げ全件とは別に、その内数として「原処分変更あり」の件数が公表されています。元の処分が見直された結果も含めて考えるため、ここでは「容認+原処分変更による取下げ」を、請求人の主張が認められた件数(一部を含む)として集計します。

表が画面に収まらない場合は、横にスクロールしてご覧ください。

再審査請求の裁決状況(社会保険審査会・全制度)
年度 容認 棄却 却下 原処分変更による取下げ 請求人の主張が認められた件数・割合容認+変更による取下げ
令和5年度 32件 541件 57件 68件 100件、13.9%
令和6年度 53件 841件 132件 56件 109件、9.9%
令和7年度 75件 1,166件 90件 36件 111件、8.0%

出典:厚生労働省「社会保険審査会 年度別(再)審査請求 受付・処理状況の推移」。「原処分変更による取下げ」は、同統計の「処分変更あり」を使用しています。原資料は、社会保険審査会が扱う「(再)審査請求」の集計です。

「主張が認められた割合」の計算方法

(容認+原処分変更による取下げ)÷(裁決計+取下げ全件)×100

原処分変更による取下げは裁決計には含まれませんが、取下げ全件の内数です。分母には、原処分変更以外の取下げも含めます。割合は小数第2位を四捨五入しています。

令和7年度の例では、容認75件+原処分変更による取下げ36件=111件。これを裁決1,331件+取下げ全件54件=1,385件で割り、8.0%となります。36件を取下げ54件に重ねて加えることはしません。

この集計では、令和5年度は100件・13.9%、令和6年度は109件・9.9%、令和7年度は111件・8.0%でした。一度決まった内容を見直してもらうことの難しさがうかがえます。ただし、これらは障害年金以外も含む全制度の結果であり、がんだけの「成功率」ではありません。また、主張のすべてが認められたことを意味するものでもありません。

数字だけで、ご自身の結果が決まるわけではありません

審査請求と再審査請求では、対象地域、手続きの段階、扱う案件が異なります。表の数字だけで、どちらが有利かを判断することはできません。ご自身の不服申立てが認められるかどうかも、この割合だけで決まるわけではありません。

大切なのは、なぜ不支給になったのかを確認し、その判断に対して、どの事実や資料を示せるかを整理することです。前の章で説明した保有個人情報開示請求で認定調書を取り寄せ、認定基準と実際の病状・日常生活の状況を照らし合わせ、争点を明確にしていく必要があります。

がんでは「再請求」もあわせて検討します

再び裁定請求を行う「再請求」も、選択肢として検討する必要があります。
がんは進行する病気であり、治療の経過や副作用、病状の進行によって、日常生活や仕事への影響が変わることがあります。
不服申立ては、元の決定の妥当性を争う手続きです。その後に障害の状態が重くなった場合などは、現在の状態で新たに請求できるかも検討します。不服申立てと、新たな裁定請求を並行して進めることもあります。

事後重症請求では、原則として請求した月の翌月分から支給されます。不服申立ての結果を待つ間に請求が遅れると、結果として受け取れない月が生じる可能性があります。現在の障害状態や請求できる要件を確認し、待つことの影響も含めて検討することが大切です。

すべての方に再請求が適しているわけではありません。元の決定を争う時点と、新たな請求で判断される時点を分け、診断書や申立書の内容が事実と矛盾しないように整理します。詳しくは障害年金の請求の種類・事後重症請求もご覧ください。

まとめ

障害年金の決定に納得できないときは、まず通知書・決定理由・申立ての期限を確認してください。審査請求は原則3か月以内、再審査請求は原則2か月以内で、それぞれ起算日が異なります。
大切なのは、争点を明確にし、事実と客観的な資料に基づいて説明することです。がんの病状が変わっている場合には、不服申立てだけでなく再請求も含め、どの方法が適切かを検討します。一人で判断せず、期限に余裕をもってご相談ください。

参考資料

制度情報確認日:2026年10月24日。

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