傷病手当金の支給を受けているときに、障害年金の支給が決定した場合はどうなるのでしょうか?意外にややこしい関係なのでここでまとめておきたいと思います。
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傷病手当金とは
詳しくは当サイトの「傷病手当金」で説明しているので読んでいただきたいのですが、超簡単に説明すると健康保険に加入している被保険者本人が、私病(労災以外)により働けなくなったときに、健康保険が月給の約3分の2を補填してくれる支援制度です。
多くのケースでは障害年金よりも傷病手当金のほうが多くなります。
例えば、障害厚生年金3級だと最低でも約58万が保障されています。日割りにするため58万円を360で除すと≒1,611となります。
次に傷病手当金ですが、標準報酬月額が10万円の人が日割りでもらえる額は 100,000x2/3÷30≒2,222円となります。
上記の例を見てもらえば、傷病手当金のほうが障害年金よりも多くなることがわかると思います。
傷病手当金と障害基礎年金
傷病手当金と障害基礎年金を同時に受けることができるときは、両方満額で受給できます。
傷病手当金は月給の約3分の2を30で除した額が1日あたりもらえる額になります。障害基礎年金は年金額を360で除した額が1日あたりもらえる額になります。
標準報酬月額が38万円、障害基礎年金額が780,000円だとすると計算式は次のようになります。
780,000÷360 約2,100円になります。
図解すると次のとおりです。
傷病手当金と障害基礎年金をすべて受け取れるので、日額10,600円が支給される計算になります(実際の支給は月単位です)。
ところが、障害厚生年金になるとややこしくなります。
傷病手当金と障害厚生年金
傷病手当金が支給されているときに障害厚生年金が支給される場合は、障害年金の日額分(障害厚生年金又は障害基礎年金+障害厚生年金の日額分)だけ、傷病手当金が支給停止になります。図解すると次のとおりです。
傷病手当金と障害厚生年金3級

傷病手当金8,500円が支給されているときに、障害厚生年金1,600円が支給開始されると、傷病手当金8,500円のうち1,600円分が障害厚生年金から支給され、傷病手当金1,600円が支給停止になります。
傷病手当金と障害基礎年金+障害厚生年金

傷病手当金が8500円支給されているときに、障害基礎年金と障害厚生年金が支給されると、傷病手当金8,500円のうち障害基礎年金+障害厚生年金の合計額5,500円が優先して支給され、傷病手当金のうち5,500円が支給停止になります。このケースでは障害基礎年金も含めた障害年金の合計額が併給調整の対象となります。ここはややこしいです。
傷病手当金より障害年金のほうが多いケース

傷病手当金が4,000円で障害基礎年金+障害厚生年金が5,000円だった場合は、傷病手当金4000円が全額支給停止になり、障害基礎年金+障害厚生年金5,000円が全額支給されます。しかし、実際は傷病手当金額より障害年金額のほうが多くなるのはかなり珍しいパターンだと思います。
障害年金が遡及支給されるケース
障害年金が遡って支給される場合は注意が必要です。
障害年金は障害認定日に障害状態に該当していれば、障害認定日から5年以内であれば遡って請求することができます。
下図のとおりです。

H27年10月に認定日の遡及請求が認められた場合、H24年5月から障害年金が支給されることになります。この遡及期間に傷病手当金を受け取っていた場合、本来なら支給停止されていた傷病手当金を健康保険の保険者に返さなければなりません。支給停止合計が高額になる場合もあるので、障害年金が初回振込時に遡及期間の分がまとめて振り込まれるので、使ってしまわずに健康保険の保険者に返却するのを忘れないようにしましょう。
傷病手当金を受給しているときに障害年金は請求していいの?
傷病手当金と障害年金は、障害基礎年金のみ受給している場合を除き、傷病手当金が支給停止になることを説明してきました。では、実際に傷病手当金を受給しているときに、障害年金を請求して傷病手当金が支給停止になったら、受給者は損をすることになるのでしょうか?
結論を言えば、障害年金受給により傷病手当金が支給停止になり、受給者が損をすることはありません。なぜなら、傷病手当金には支給開始日から通算1年6ヶ月という支給期間がありますが、障害年金に期間はないからです(症状が軽くなり支給停止になることはあります)。
傷病手当金受給中でも、初診日から1年6ヶ月が経過していて、障害年金の障害状態に該当していれば、障害年金の請求はするべきです。もちろん、傷病手当金をもらっているからといって、障害年金受給の可否に影響を与えることもありません。障害状態でいえば、傷病手当金より障害年金のほうが審査が厳しく受給へのハードルは高いです。それに、障害年金のほうが請求から支給が開始されるまで期間がかかる(請求受理後3〜4ヶ月・準備等を含めると半年ぐらい)ので、傷病手当金受給期間でも障害状態に該当していれば、障害年金を請求しましょう。
傷病手当金の支給期間と申請時期
健康保険の傷病手当金の支給期間は、令和4年1月1日から通算1年6ヶ月に改正されました。就労等により支給されない期間は通算期間に含めません。支給開始日から暦で1年6ヶ月が経過しただけで、一律に受給期間が終了するわけではありません。
傷病手当金を温存するためだけに申請を見送る必要はありません。給与や有給休暇、障害年金との調整、申請の時効等を確認し、加入先の保険者に相談しましょう。
以下の図は改正前の参考資料です。現在の支給期間の説明は上記のとおりです。

改正に至る経緯を紹介した当時の資料:第135回社会保障審議会医療保険部会、健康保険新着情報〜マイナンバーが保険証に!傷病手当金期間が通算1年6ヵ月に!〜
まとめ
傷病手当金と障害年金の関係について解説してきました。障害基礎年金の場合は傷病手当金と両方満額もらえますが、障害厚生年金の場合は、障害基礎年金の金額分も含めて傷病手当金が支給停止されるので注意しましょう。
傷病手当金受給中に障害厚生年金が支給される場合、障害厚生年金支給開始月まで遡って傷病手当金を保険者に返還する必要がでてくるので注意しましょう。
傷病手当金は、療養中の生活を支える大切な制度です。支給要件や他の給付との調整を確認し、請求できる期間を逃さないよう申請しましょう。
