障害年金と障害者手帳については名前が似ており、ともに障害が一定の期間続くまたは残ったときに対象となるので、関連性があると捉えられがちですが、基本的に制度自体は別のものです。今回は障害年金と障害者手帳がどのように違うのかを説明します。
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障害年金
障害年金は、障害状態になったときに国から年金が支給される公的年金で、日本年金機構法に基づき日本年金機構が運営業務をおこなっています。詳細は当ホームページのがん障害年金カテゴリーでたくさん解説しているのでここでは割愛させていただきます。
障害者手帳とは
障害者手帳は都道府県により運営されており、細かな規程等が都道府県により異なります。
障害者手帳は障害が残ったときに一定の基準を満たしており、各市区町村窓口で申請することにより交付されるものであり障害により、「身体障害者手帳」、「精神障害者保健福祉手帳」、「療育手帳」の3つの種類に分かれます。これらはいずれも公共料金等の割引や税金の減免などの優遇サービスが受けられるものです。
がんが対象となる可能性があるのは「身体障害者手帳」です。がんと精神的疾病を併発していれば、「精神障害者保健福祉手帳」も対象となる可能性があります。「療育手帳」は知的障害者が対象で、がんを起因して交付される可能性はほぼないと思うので、今回は割愛させてもらいます。
身体障害者手帳
身体障害者手帳は身体障害者福祉法に基づき、都道府県知事、指定都市長、中核市長により交付されます。原則、更新はありませんが、障害の状態が軽減されるなどの変化が予想される場合には、手帳の交付から一定期間を置いた後、再認定を実施することがあります。
交付対象者は身体障害者福祉法別表に掲げる身体上の障害のある人です。別表に定める障害とはいづれも、一定以上で永続することが要件とされています。
身体障害者手帳の等級
身体障害者手帳の等級は重度の人から1級〜6級まであります。
詳しい等級は身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)を参照してください。等級表に7級というのがありますが、7級は単独では手帳は交付されません。身体障害者手帳の等級と障害年金の等級は認定基準が違うため、関連性はありません。そのため、身体障害者手帳1級を交付されている人が、障害年金を必ずもらえるというわけではなく、それぞれの認定基準により等級や支給(交付)の可否が決定されます。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、精神保健及び精神障害者福祉法に関する法律に基づき、都道府県知事、指定都市長、中核市長により交付されます。2年ごとに認定を受ける必要があります。
何らかの精神疾患により長期わたり日常生活または社会生活への制約があると公的に示すための証明書類です。そのため、初診日から6ヶ月以上経過していることが必要です。
精神障害者手帳の等級
精神障害者保健福祉手帳は1〜3級まであります。
障害等級は障害年金の等級に準拠し、申請時の診断書に基づいて審査を行い交付されます。
- 1級…精神障害であって日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 2級…精神障害であって日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 3級…精神障害であって日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか,又は日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
認定基準がほぼ同じのため、精神の障害により障害年金を受給していれば、障害年金の年金証書提示により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けられます。しかし、障害年金は初診日を証明し、保険料を一定以上納めている必要があるため、精神障害者保健福祉手帳の交付により、障害年金が支給されることはありません。
障害年金と障害者手帳の違い
両者とも自ら申請しなければもらえないのは同じですが、障害者手帳は様々な公的優遇サービスを受けることができるのに対して、障害年金は年金として月々現金が支給されます。
障害者手帳で受けられるサービス(都道府県等により異なる)
障害者手帳で受けられる公的サービスは次のようなものがあります。
- 医療費、補装具、リフォーム費用の助成
- 所得税、住民税、相続税、自動車税軽減
- 公共交通機関の割引サービス
- その他割引サービス
(携帯電話、NHK、動物園入園料、映画館など) - 障害者雇用での就職、転職
- 公営住宅の優先入居
- 障害者への手当等(例:千葉県)
※介護保険サービスが利用できるときは、介護保険が優先されます。
※細かな規程は都道府県により異なるので、各市区町村の障害福祉窓口にお問い合わせください。
障害年金と障害者手帳の比較
障害年金等級と身体障害者手帳等級
障害年金が重い順に1級〜3級・障害手当金と4つの等級があります。身体障害者手帳は重い順に1級〜6級(7級があるが単独での支給はなし)まであります。障害の内容も等級ごとにリンクのしているわけではなく、それぞれの認定基準によって定めるられています。
障害年金は国民年金法と厚生年金法を根拠にしており、身体障害者手帳は身体障害者福祉法を根拠にしており、制度自体がまったく別のものと考えていいです。
障害年金等級と精神障害者手帳等級
精神疾患による障害年金の等級と精神障害者手帳における等級はほぼ同じと考えて問題ないと思います。実際に障害年金の年金証書があれば、障害年金の等級に準じた精神障害者手帳が交付されます。
しかし、精神障害者手帳を持っていれば、障害年金が支給されるわけではないことに注意が必要です。障害者手帳を持っていてもそれは参考程度と考え、障害年金における認定基準(初診日・保険料納付要件・障害認定日など)を元に判断しましょう。
診断書を書ける医師
障害年金
障害年金において診断書は、厚生年金法施行規則第47条2項、国民年金法施行規則第31条2項において、障害の状態の程度に関する医師又は歯科医師の診断書とされています。
しかし、精神の障害は例外規定が以下のように定められています。
精神の障害の診断書は傷病の性質上、原則、精神保健指定医又は精神科を標ぼうする医師に記入していただくことになっています。ただし、 てんかん、知的障害、発達障害、認知症、高次脳機能障害など診療科が多岐に分かれている疾患について、小児科、脳神経外科、神経 内科、リハビリテーション科、老年科などを専門とする医師が主治医となっている場合、これらの科の医師であっても、精神・神経障害の診断又は治療に従事している医師であれば記入可能です。
がんを含めたそれ以外の診断書に関して言えば、医師であれば研修医や歯科医師等は関係なく誰でも書いていいとうことになります。ただし、明らかに専門外の医師が作成する診断書は障害年金を審査する認定医の心象が悪くなる可能性はあると思います。
身体障害者手帳
身体障害者手帳の診断書は、身体障害者福祉法第15条の指定医(以下「15条指定医」)のみが作成できます。
15条指定医は以下の条件を満たす必要があります。
病院又は診療所において、各障害区分(申請しようとする障害区分)ごとに関係ある診療科で診療に従事し、原則として5年以上の臨床経験を有する者で、身体障害者の福祉に理解を有する者。
医師の指定に関する基準
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳の診断書は、精神障害の診断又は治療に従事する医師によるものであり、これは、精神保健指定医を中心とし、精神科医を原則とするが、てんかんの患者について内科医などが主治医となっている場合のように、他科の医師であっても、精神障害の診断又は治療に従事する医師は含まれます。
まとめ
障害年金と障害者手帳について解説してきましたが、この両制度を混同している方が多いです。それは、患者だけでなく医療従事者も同じです。
診断書を書くにあたり、障害年金は免許やライセンスなどは必要なく、医師又は歯科医師であれば誰でも書くことができます(精神の障害は例外)。一方、身体障害者手帳の診断書(意見書)を書くのには身体障害者福祉法第15条の指定医である必要があります。実務においても、医師がこのふたつを混同しており、指定医ではないから障害年金の診断書を書けないという問い合わせもいただくことがあります。とくにがんの障害年金においての認知度は医療従事者の間でもまだまだ低いです。
1人でも多くのがん患者さんに障害年金の普及活動をすると同時に医療従事者への普及活動も必要だと思うので、今後はそのような活動もしていければと思います。
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