私は自分自身も肺がん体験者であり、肺がんで障害年金を受給しておりました。

現在は障害年金ではマイナーであるがんの障害年金を専門に請求代理を行っております。

がんで障害年金を受給する一番の障壁は、診断書を記載していただく医師に障害年金が周知されていないことだと多くの請求代理をしていて感じます。

がんを診察している医師に障害年金の診断書の記載を依頼すると、障害年金の診断書を初めて書くという医師が7割ぐらいだと感じます。

国立がんセンター中央病院や東病院などのがん患者を多く診ている医師は障害年金の診断書を書いた経験があることが多いと思います。

ただし、診断書の記載に慣れているがんを診療している医師というのは、ほんとうに少ないです。

私がよく、障害年金のセミナーなどでご一緒させていただく日本医科大学武蔵小杉病院、腫瘍内科部長の勝俣範之先生はその数少ない1人だと思いますが、残念ながら、勝俣先生のように障害年金に理解のある医師はかなり少ないと思います(勝俣先生とのセミナーの様子はこちらから)。

がんでの障害年金が、生命保険の給付金をもらうための診断書と決定的に違うところは、年金事務所からもらってきた診断書原本を何も言わずに、医師に「障害年金の診断書お願いします」と依頼をしても、請求者が希望する障害等級になる診断書が出来上がってくることはほぼないと思います。

では、がんで障害年金はどうすれば受給できるのか?

今回はがんの障害年金のポイントをがん専門社労士がわかりやすく解説します。

がんで障害年金が認めれる人は障害年金の全体のわずか3%ぐらい

障害年金業務統計(令和元年度決定分)」で障害年金の新規受給決定の人数が公表されました。

こちらで、障害別の支給決定数が公表されています。
障害年金の診断書は全部で8様式あります。

がんでの障害年金請求で使用する診断書は基本的には「血液・造血器・その他の障害用」の診断書を使用します。

 

もちろん、がんによる局所の障害(例えば脳腫瘍の神経症状による下肢の麻痺症状があれば「肢体の障害用」を使いますし、舌癌で舌の全摘などは「そしゃく、嚥下・言語機能の障害用」などを使用)があれば、その部位の診断書を使用しますが、抗がん剤治療の副作用やがんによる全身状態の悪化は8の「血液・造血器・その他の障害用」の診断書を使用します。

下図を見ていただきのですが、「血液・造血器・その他の診断書」で令和元年度に障害年金の支給が新たに決定した割合は全体のわずか3.7%です。

もちろん「血液・造血器・その他の診断書」のすべてががんによる請求ではないです。

がんは「その他の障害」に該当しますので、がん患者さんでも局所の障害で別の診断書を使っているのを考慮しても、がんで認められている割合は多く見積っても3%ほどかと推測します。

がんで障害年金を受給する人は少ない

令和元年度に障害年金新規請求が3級以上で認められた件数は約10万件です。

仮にがんで3級以上に認められたのがそのうちの3%となると、件数は約3000件となります。

この数字はがんで亡くなられる方の人数を考えると明らかに少ないと思います。

これは、がんにより障害年金で定める障害状態に該当していても請求していない方が多いことを示していると思います。

がんによる障害年金受給割合が低い理由

わたし自身のがん患者としての経験と、患者会でたくさんのがん患者の方と接してきたのと、多くのがん障害年金請求代理手続きをしてきて感じたこと以下にまとめました。

  • がん患者さんに障害年金の制度が認知されていない
  • 働いていると支給されないと思っている
  • 認定基準が分かりづらい
  • がんを診療する医師が障害年金の診断書を書くことに慣れていない
  • 社会保険労務士もがんでの障害年金申請のポイントを知らない
  • がん患者が認定基準を満たしても、症状の悪化により請求する気力と体力がない

このようなことが複数重なり、結果としてがんでの障害年金の受給を難しくしています。

相談場所として病院のがん相談支援センターがあると思いますが、ソーシャルワーカーなどの相談員の方が、がんの障害年金に詳しければいいですが、相談員の方もがんでの障害年金請求の成功体験が少ないため、どのような診断書であれば障害年金が受給できるのかがわからないという方が多いです。

もう一つ、相談場所として年金事務所があると思いますが、年金事務所の相談員は請求手続きを完結させることはプロです。

そのため手続きを進めるためのアドバイスはきちんとしてくれます。

ただし、障害年金請求を受給に導くプロではありません。

そのため、請求書類で一番大切な診断書の書き方を丁寧に教えてくれる方は少ないと思います。

年金事務所であれ、がん相談支援センターであれ、最初に相談する相手がとても親切でがんの障害年金に詳しければ、受給につながるアドバイスを受けられる可能性がありますが、詳しくなければ「あなたの症状では障害年金はもらない」と言われて受給の機会を失ってしまうことも多く、実際に当事務所に相談に来られるかたは、そのような方が多いです。

しかし、「あなたの症状では障害年金はもらえない」と言われてしまった方でも、その後当事務所に依頼をされて受給されるかたも多くいらっしゃいます。

がんで障害年金を受給するためのポイント

一番大事なのは医師の診断書

障害年金で一番大事なのは医師の診断書です。

医師の診断書で悪性新生物(がん)の認定基準を満たしているかを判断できるとです。

しかし、その診断書を書いてもらうのが難しいのです。

なぜなら、がんを診療している医師が悪性新生物の認定基準を理解しているわけではないからです。

もちろん、障害年金の認定基準を理解するのは医師の仕事ではありません。

しかし現実問題として、認定基準を満たしている診断書でなければ、実際の状態が認定基準を満たしている方であっても、書類審査のみの障害年金審査では、不支給となってしまうことが多いのです。

そのため、医師に診断書を依頼する際に認定基準を満たす診断書を書いてもらうように導く必要があると考えます。

もちろん、診断書に事実とは異なることを記載してもらうわけではありません。

悪性新生物の認定基準に則した事実を記載をしてもらう必要があります。

依頼する側が認定基準を理解する必要がある

障害年金を受給できる診断書とは、悪性新生物の認定基準に則した診断書が必要であることを先述しました。

そのような診断書を書いてもらうように主治医を導くためには、依頼する側が悪性新生物の認定基準を理解している必要があります

その上で、医師に病状をきちんと伝え、診断書を作成する必要があります。

国民年金・厚生年金保険 障害認定基準のリンクを貼っておきます。悪性新生物の認定基準はP97から記載されています。

この認定基準を理解して、医師をうまく導くことができれば、障害年金の受給に近づくことができると思います。

しかし、障害年金の知識がない方の場合、自分で請求して障害年金の認定基準を満たす診断書を作成してもらうことは正直難しいし、受給の可能性に影響を与えると思います。

私自身も、自分が障害年金を受給したときは社労士に依頼をしました。

でも、知識がある方で、ご自身で請求したい方もいらっしゃると思います。

その際は、私が解説している動画を見ていただくことで診断書の精度をあげることが可能ではないかと思います。

がん障害年金をYouTubeで解説 〜ワンステップのYouTubeから〜

勝俣範之先生とのがん障害年金セミナーがYouTube で公開中です

医師の診断書作成が簡単なケース

がんの障害年金でも、医師の診断書作成が簡単なケースもあります。

このようなケースに該当する場合は、私のような社労士にお願いする必要はなく、請求者がご自身で手続きをしても全然問題ないと個人的には思っています。

それは診断書にその事実のみが記載されていれば障害年金等級が決定するケースです。

障害認定日の例外と内容が同じになりますが、下記に障害に関わる施術があれば、その記載のみで障害認定されます(もちろん病歴就労状況等申立書などの書類の作成は必要となります)。

障害に関わる施術 障害認定日
咽頭全摘出 咽頭摘出日  2級
切断または離断による肢体の障害 切断日または離断日(障害手当金は創面治癒日)
脳血管障害による機能障害 初診日から6ヶ月を経過した日以後
人工透析 透析開始から3ヶ月経過した日、かつその日が初診日から1年6ヶ月以内の場合  2級
在宅酸素療法 開始日(常時使用の場合)3級
人工肛門増設、尿路変更術 増設日または手術日から6ヶ月経過した日 2級・3級
新膀胱増設 増設日 3級
人工骨頭、人工関節挿入置換 挿入置換日
人工弁、心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD) 装着日 3級
心臓移植、人工心臓、補助人工心臓 移植日又は装着日1級(術後の経過で等級の見直しがある)
CRT(心臓再同期医療機器)
CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)
装着日 重症心不全の場合は2級(術後の経過で等級の見直しがある)
胸部大動脈瘤解離や胸部大動脈瘤により人工血管(ステントグラフトも含む)を挿入置換 挿入置換日 3級(一般状態区分表が「イ」か「ウ」の場合)
神経系の障害で現在の医学では根本的治療方法がない疾病 今後の回復は期待できず初診日から6ヶ月経過した日以後において気管切開下での人工呼吸(レスピレーター)使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており日常の用を弁ずることができない状態であると認められるとき
遷延性植物状態 障害状態に至った日から起算して3ヶ月を経過した日以後に、医学的観点から、機能回復がほとんど望めないと認められるとき

自分で作成する病歴・就労状況等申立書について

障害年金の必要書類として、請求者の障害状態を判断する書類として請求書自身が作成する「病歴・就労状況等申立書」という書類があります。

ただし、この書類の位置付けはあくまで、診断書の記載内容を補足するものという理解の方がいいと思います。

診断書に記載のないことを、この病歴・就労状況等申立書にたくさん書いても、ほぼ意味がないと思います。

診断書に記載のある症状について、より詳しく説明する内容になっているのがいいです。

例えば、診断書に「抗がん剤治療の副作用による倦怠感見られる」という記載があったときに、病歴・就労状況等申立書に『倦怠感のため1日のほとんどをベッドで寝ている』というように、診断書の記載内容をより詳しく説明するような感じです。

まとめ

がんの障害年金請求のポイントをまとめてみました。

結論としては、障害認定基準に則した診断書を記載してもらうことが一番重要になります。

しかし、がんを診療する医師は障害年金の診断書を書いたことがない医師が多く、認定基準を理解している医師はほとんどいないと思った方がいいと思います。

いままで、がんで障害年金を請求する人が少なかったので、がんを診療している医師も障害年金の診断書記載の経験がなく、仮に診断書を書いたことがあったとしても、不支給となっているケースも多く、成功体験がないことも一因といえます。

それは、がん相談支援センターの相談員も同じです。

がんでの障害年金を苦手している方も多く見られます。

そのような状況を少しずつでも変えていくためには、がんで障害年金の申請する方が増えて、多くの医師やがん相談支援センターの方が、成功体験を積み上げる必要があるのかなぁっと思っております。

相談先として社会保険労務士もあると思いますが、障害年金というのは社会保険労務士の業務の中でも専門性が高く、扱ったことがない社労士も多く、さらに障害年金の中でもマイナーと言われるがんでの請求は、なかなかハードルが高いと思います。

がんでの障害年金請求を社労士へのご依頼を検討中の方がおりましたら、当事務所へぜひご相談ください。

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