国が「がん対策推進基本計画」を策定し、がん患者の治療と仕事の両立を施策として取り組んでいることは、国のがん患者支援体制で解説しましたが、実際に、がん患者はきちんと治療と仕事の両立ができているのかを見ていきたいと思います。

がん患者の就労状況

がん患者の就労状況については、「がん患者の就労等に関する実態調査(平成31年東京都)」を参考に見ていきたいと思います。

就労可能年齢でがんに罹患する割合

独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターの調べによると、がん患者の3人に1人は就労可能年齢(20歳〜64歳)で罹患しています。就労人口を確保するために、働ける高齢者には働いてもらう社会になりつつあるので、この就労可能年齢の上限とされている64歳はもう少し高くなるはずです。20歳〜70歳までにがんに罹患するのは、実に全体の45.6%となっており、仕事をしている人ががんになることは、もはや特別なことではなくなる時代になってきています。

がんになった場合の就労状況の変化

東京都のがん患者の就労等に関する実態調査(平成31年)によると、がんの罹患がわかった時点で働いていた人のその後の就労状況としては、「病気に伴う長期休業をしながらも復職・継続した」が32.9%、「有給の範囲で休み、仕事を継続した」が35.8%、がん罹患後に仕事を辞めた人もしくは別の会社に再就職した人は16.7%でした。
進行度別で見ると、0〜Ⅱ期の人の方が、就労継続率が高くなりましたが、Ⅲ・Ⅳ期の人も仕事を辞める人は18.7%であり、がん患者の就労継続率が年々上昇してきています(前回調査(平成26年の全体退職率は21.3%)。
就労形態別に見ると正社員の退職率は約1割に対し、非正規雇用の退職率は3割弱と数字に開きが見えます。

がん患者の就労等に関する実態調査(平成31年東京都)

離職した理由

がん患者の就労等に関する実態調査(平成31年東京都)

退職した人の離職理由ですが、「治療・療養に専念する必要があると思ったため」66.2%と一番多く、「体力面等から継続して就労することが困難であると思ったため」46.5%と多くなっています。

離職のタイミング

退職した人の離職のタイミングを見ていると、「がんの疑いで初めて医療機関の診察を受けたとき〜最初の治療を始める前まで」36.6%「一次治療以後」47.9%となっており、がんに罹患後、すべてのタイミングで退職を決める人がいることがわかります。

がん患者の就労等に関する実態調査(平成31年東京都)

とくに診断時から治療開始前というのは、精神的に落ち込み、正常な判断に支障をきたすおそれがあります。そのため、この段階においては退職という重要な判断はすべきではありません。
下図に、がんに罹患した人の心の動きが図解されています。がんに罹患した多くの人は告知後、とても落ち込みます。そこから、時間をかけて、少しずつ回復していくのが一般的だと言われています。私自身もこのような感じだったと思います。医療関係者や会社の上司などは、この心の動きも理解した上でアドバイスする必要があります。

がん罹患後の再就職

退職した人のうち、「再就職は試みなかった」56.3%と一番多く、「再就職した人」26.8%となり、一度退職してしまうと再就職する人は約4分の1と少ない状況です。

まとめ

がん患者の就労状況の実態をまとめてみました。がん患者の就労状況は厳しく、就労中にがんになってしまったら、依願退職・解雇により、16.7%の人が職を失ってしまう現状があります。一度、職を失ってしまうと、再就職は条件、気力、体力面において厳しくなることがアンケート結果よりわかります。一方で休職制度を使っている人が11.1%おり、有給や休職をいかにうまく使うかということも就労継続の重要なポイントになります。 
退職のタイミングは診断時から治療中のすべての段階で発生しているので、がん患者の治療と仕事の両立のためには、治療のすべての段階において支援が必要となってきます。

 

 

 

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