障害年金はきちんと年金の保険料を納めている人が、傷病により障害状態になっているうえで、日本年金機構に請求しなければ支給されることはありません。今回は、障害年金をもらうための基本的事項について説明します。

がんで障害年金をもらうには

請求手続をする

まず、障害年金は自ら請求をしないと、どんなに重い障害状態であっても支給されることはありません。必要書類を全国の年金事務所または街角の年金相談センターで受け取り、診断書等を医師に依頼して記入してもらい、全国の年金事務所または街角年金センターに提出します。提出場所に指定はなく、全国どこの年金事務所でも受理されます
がんで障害年金を受給するためには、障害年金をもらうための3つの要件を満たしたうえで、請求手続きをする必要があります。
この3つの要件を満たしているかを、日本年金機構の新宿にある「障害年金センター」で専門の認定医が書類のみで審査し支給が決定されます。
書類のみで障害の状態をわかってもらわなければなりません。審査段階で診断書等の書類で確認すべきことがあるときのみ、請求者や主治医に照会をする場合があります。しかし、基本的には書類審査のみで受給の可否が決定するので、3つの要件を満たしていることを、書類上できちんと証明する必要があります。
がんの場合はがんでの障害認定基準があり、それに該当しているかを書類により審査します。しかし、がんでの障害の多くは外部障害(手・耳・足などの外見で見える障害)ではなく、内部障害(外見からわからない障害)なので、提出書類である診断書や病歴・就労状況等申立書の書き方により受給の可否や等級に差が出てきます。がん障害年金受給の難しさは「最新統計から見る障害年金〜がん障害年金を受給するのは難しい〜」において解説しております。

なおこの請求手続は委任状があれば、家族や友人でも代わりに行なうことが出来ますし、社会保険労務士に任せることも可能です。ただし報酬を得て代理請求ができるのは、社会保険労務士だけです

余談ですが、弁護士や司法書士、税理士などのいわゆる士業と呼ばれる人たちの仕事の多くは、自分でもできるが、専門性が高く自分でやることが難しい(手間がかかる)ので、専門家である資格を持っている人に依頼するものです。裁判も民事裁判であれば、弁護士をつけなくても構いません。税理士にお願いする会計業務なども自分で出来れば依頼しなくてもいいものです。社会保険労務士がおこなう障害年金代理請求も自分で請求し、審査で認められる自信があれば、依頼する必要はまったくないです。

年金事務所等に提出後は、東京にある日本年金機構障害年金センターに書類が集められ、すべてここで審査・認定が行われます。平成29年4月までは、障害基礎年金については各地域において、各地域ごとの認定医による審査・認定が行われており、障害厚生年金のみ東京に集められ審査・認定を行なっていましたが、平成29年4月より障害基礎年金・障害厚生年金ともに東京で一括して300名の認定医による審査・認定を行なっています。
審査期間は約3〜4ヶ月となっており、年金が決定した場合は年金証書が、不支給決定の場合は不支給決定通知書が請求者本人あてに送られて送られてきます。

障害年金をもらうための3つの要件

  1. 初診日要件
  2. 保険料納付要件
  3. 障害状態該当要件

障害年金をもらうためには、この3つの要件をすべて満たす必要があります。どんなに重い症状でも、初診日要件と保険料納付要件(20歳前に初診日がある場合は除く)を満たしていなければ、障害年金を受給することはできません。

1.初診日要件

初診日がなぜ重要なのか

障害年金を請求する上で、初診日というのはとても重要な意味を持ちます。初診日が特定出来なければ、障害年金受給へのハードルが高くなります。なぜそれほど大事かというと、初診日において確認しなければならないことが2つあるからです。

1.保険料納付要件の確認
2.加入制度の確認

1の保険料納付要件の確認とは、初診日前においてちゃんと保険料を納めていたかを確認することです。2の加入制度の確認とは、初診日において国民年金に加入していたか、厚生年金に加入していたかを確認することです。国民年金と厚生年金ではどちらに加入していたかにより、受け取れる年金額が変わってきたり、3級の場合は厚生年金加入者の障害厚生年金にのみにしかなく、国民年金加入者の障害基礎年金には3級はないので、受給できない等の大きな違いがあります。
そのため障害年金において初診日の確認がとても大事になってくるのです。

がんにおける初診日とは

法律において、初診日とは障害の原因となった傷病についてはじめて医師等の診療を受けた日となっています。具体的には次のように定められています。

  1. はじめて診療を受けた日(治療行為または療養に関する指示があった日)
  2. 同一の傷病で転医があった場合は、1番初めに医師等の診療を受けた日
  3. 過去の傷病が治癒(社会的治癒も含む)し同一傷病で再度発症している場合は再度発症し医師等の診療を受けた日
  4. 傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日
  5. じん肺症(じん肺結核を含む)については、じん肺と診断された日
  6. 障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日
  7. 先天性の知的障害(精神遅滞)は出生日
  8. 先天性心疾患、網膜色素変性症などは、具体的な症状が出現し、初めて診療を受けた日
  9. 先天性股関節脱臼は、完全脱臼したまま成育した場合は出生日が初診日、青年期以降になって変形性股関節症が発症した場合は、発症後に初めて診療を受けた日

    補足:初診日は、原則として初めて治療目的で医療機関を受診した日とし、健康診断受けた日(健診日)は初診日として取り扱わないこととする
    ただし、初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証(受診状況等証明書)が得られない場合であって、医学的見地からただちに治療が必要と認めれる健診結果である場合については、請求者から健診日を初診日とするように申し立てがあれば、健診日を初診日とし、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を求めた上で初診日を認めることができることとする。

がんが見つかるケースと初診日

  1. 症状が出て病院を受診する(肺がんのせきや消化器がんの血便など)
  2. 自己検診において異常を発見(乳がんのしこりや皮膚がんのほくろなど)
  3. 健康診断で要再検査の指摘
  4. 違う病気での診察や検査によりがんを疑う異常を指摘

1.2場合は、最初にその症状で医師の診察を受けた日が初診日です。このケースではがん専門病院や大学病院などではなく、近くのクリニックという場合も多いと思います。

3の場合は健康診断において異常を指摘され、再検査のため受診した病院が初診日です。ただし、健診センター等を使わず、クリニック等で健康診断をおこない異常を指摘され、その場で療養の指示を受けた場合は、その健康診断が初診日となります。

4の場合は、別の病気で(別の病気だと思って)病院を受診していて、その病気の診察や検査で異常を指摘されるケースです。このような場合は、医師から別の診療科または別の病院を紹介される場合が多いです。このケースの場合、がんと因果関係のある自覚症状があって病院を受診していた場合は、その症状で初めて病院を受診した日が初診日となり、まったく因果関係のない病気で病院を受診していて、たまたま検査等でがんを疑う異常を指摘された場合は、その指摘され療養の指示を受けた日が初診日となります。

初診日は病院が廃院していたり、カルテの記録が残ってない場合などは特定するのが非常に難しくなることがあります。ただし、障害年金をもらうためにはこの初診日を特定しなければなりません。

2.保険料納付要件

初診日が20歳〜65歳まで方

初診日の前日において初診日の属する月の前々月まで、きちんと保険料を納めていないと障害年金は受け取れません。保険料を納めている基準は2つあります。どちらかを満たしていれば障害年金を受給できます。

  1. 加入期間のうちの3分の2以上の保険料を納めている
  2. 直近の1年間に保険料の未納がない(令和8年3月31日までの特例)

補足:保険料免除期間は保険料納付済み期間としてカウントします。
障害厚生年金の場合は国民年金と厚生年金の合算した期間が3分の2以上。

保険料納付要件を確認するときは、まず2の直近1年間、保険料を納めていたかを確認しましょう。2の要件を満たしていなければ、1の要件を確認するのがいいと思います。

例:直近の1年間に保険料の未納がない
出典:日本年金機構HPより

例:加入期間のうち3分の2以上の保険料を納めている
出典:日本年金機構HPより

初診日が20歳未満の方

20歳未満の方はもともと国民年金の保険料を納める義務がありません。そのため、20歳未満が初診日の障害で20歳以後に障害状態であれば、障害基礎年金が支給されます。保険料を納める必要もないことから、保険料納付要件はありません。

ただし、本人が保険料を納めずに障害基礎年金が支給されることから、特例的に所得制限が設けられています。
所得制限の金額はをご覧ください「障害年金の額と障害基礎年金と障害厚生年金違い」20歳未満の障害年金をご覧ください。

初診日において20歳未満だが、働いていて厚生年金に加入していた場合は、20歳以上でに厚生年金加入している者と同じ扱いをするので、障害基礎年金と障害厚生年金の受給資格があります。

3.障害状態該当要件

障害年金でいう障害状態とは

障害年金でいう障害状態については、国民年金法施行令別表・厚生年金保険法施行令別表にて規定があります。
さらに、どこの障害でどの程度の障害かにより、国民年金・厚生年金保険障害認定基準 により障害等級が細かく定められています。目、聴覚、平衡機能など19種類に分かれています。がんは悪性腫瘍による障害として定められています。
この認定基準を理解した上で、診断書や病歴・就労状況等申立書などの書類を作成していく必要があります。ただ、やみくもに症状だけを記入するのではなく、認定基準に当てはまるように作成していかなければなりません。

認定基準にある障害状態の基本

ポイントとしておさえておく必要がある大前提は、国民年金・厚生年金保険障害認定基準 にて定めている障害状態の基本です。以下にあるのが等級ごとの基準です。

(1)1 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずる ことを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。 例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね 就床室内に限られるものである。

(2) 2 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。 例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、 それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活 でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえ ば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。

(3) 3 級
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。 また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については、 第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)

(4) 障害手当金
「傷病が治ったもの」であって、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。

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