初診日とは、障害年金3つの要件(初診日要件保険料納付要件障害状態該当要件)のひとつであり、初診日において保険料納付要件の確認、国民年金と厚生年金のどちらにの制度に加入していたかを確認し、障害認定日を決定するためにも必要です。障害年金の請求をするにあたり、初めに確認し特定させる必要があります。
認定基準においては「原則として、本人の申立等及び記憶に基づく受診証明のみでは判断せず、必ず、その裏付けの資料を収集する」と定義されています。

障害年金の初診日とは

初診日の定義

認定基準において、「初診日とは、障害の原因となった傷病につき、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日をいう」とされています。具体的には次のように定められています。

  1. はじめて診療を受けた日(治療行為または療養に関する指示があった日)
  2. 同一の傷病で転医があった場合は、1番初めに医師等の診療を受けた日
  3. 過去の傷病が治癒(社会的治癒も含む)し同一傷病で再度発症している場合は再度発症し医師等の診療を受けた日
  4. 傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日
  5. じん肺症(じん肺結核を含む)については、じん肺と診断された日
  6. 障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日
  7. 先天性の知的障害(精神遅滞)は出生日
  8. 先天性心疾患、網膜色素変性症などは、具体的な症状が出現し、初めて診療を受けた日
  9. 先天性股関節脱臼は、完全脱臼したまま成育した場合は出生日が初診日、青年期以降になって変形性股関節症が発症した場合は、発症後に初めて診療を受けた日

    補足:初診日は、原則として初めて治療目的で医療機関を受診した日とし、健康診断受けた日(健診日)は初診日として取り扱わないこととする
    ただし、初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証(受診状況等証明書)が得られない場合であって、医学的見地からただちに治療が必要と認めれる健診結果である場合については、請求者から健診日を初診日とするように申し立てがあれば、健診日を初診日とし、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を求めた上で初診日を認めることができることとする。

初診日の証明

初診日は自己申告だけでは認められず、初診日を証明する書類(受診状況等証明書)を用意する必要があります。「受診状況等証明書」は、初診日に診察を受けた病院でカルテをもとに作成してもらう必要があります。
しかし、初診日は病院が廃院していたり、カルテの記録が残ってない場合などは特定するのが非常に難しくなることがあります。法律に終診から5年間はカルテ保存義務がありますが、5年以上経過するとカルテの保存義務がないため破棄されてしまうケースもあります。
終診から5年以上経過して、年数が経つほどカルテが破棄されてしまう可能性は高くなりますが、5年以上経過するとすべての病院において必ずカルテが破棄されるわけではなく、長い期間カルテを残している病院も多いので、廃院していなければ、初診日から5年以上経過していても初診日の病院に問い合わせてみましょう。

初診日の証明が必要ない人

初診日を証明するためには、医師に「受診状況等証明書」という書類を書いてもらう必要があります。しかし、初診日の病院の診療科と現在の主治医がいる病院の診療科が同じ場合は、「受診状況等証明書」は必要ありません。ただし、病院が同じでも、診療科が異なる場合は「受診状況等証明書」が必要になるので注意してください。

がんにおける初診日

がんが見つかるケースと初診日

  1. 症状が出て病院を受診する(肺がんのせきや消化器がんの血便など)
  2. 自己検診において異常を発見(乳がんのしこりや皮膚がんのほくろなど)
  3. 健康診断で要再検査の指摘
  4. 違う病気での診察や検査によりがんを疑う異常を指摘

1.2場合は、最初にその症状で医師の診察を受けた日が初診日です。このケースではがん専門病院や大学病院などではなく、近くのクリニックという場合も多いと思います。

3の場合は健康診断において異常を指摘され、再検査のため受診した病院が初診日です。ただし、健診センター等を使わず、クリニック等で健康診断をおこない異常を指摘され、その場で療養の指示を受けた場合は、その健康診断が初診日となります。

4の場合は、別の病気で(別の病気だと思って)病院を受診していて、その病気の診察や検査で異常を指摘されるケースです。このような場合は、医師から別の診療科または別の病院を紹介される場合が多いです。このケースでは、がんと因果関係のある自覚症状があって病院を受診していた場合は、その症状で初めて病院を受診した日が初診日となり、まったく因果関係のない病気で病院を受診していて、たまたま検査等でがんを疑う異常を指摘された場合は、その指摘され療養の指示を受けた日が初診日となります。

そのため、がんとは全く関係のない病院や診療科での診察が初診日となる可能性もあります。
具体例をあげると、腰が痛いので家の近くの整形外科の病院を受診し、湿布を処方されて様子をみていたが、3回目の受診で大学病院の整形外科でMRI検査を受けるよう指示され、腰椎にがんが見つかり、その後の全身の精密検査で肺がんが原発の骨転移であることがわかった場合は、家の近くの整形外科の病院を最初に受診した日が初診日となります。
ただし、整骨院や鍼灸院は初診日とはならないので注意が必要です。

がんにおける初診日

がんにおいては、初診日から5年以上経過して症状が悪化し、障害状態に該当するケースは、乳がんなどの10年以上経過してからも再発するリスクがある一部のがんを除き、それほど多くないと思いますが、最近は新たな治療法や新薬の開発により、5年生存率はあがってきています。全国がんセンター協議会発表の5年生存率においても、1997年から1999年症例「61.8%」に対して、2009年から2011年症例「68.4%」となっています。
このように長期生存する方が多くなると、5年以上経過してから症状が悪化する患者さんもこれからは増えてくると思います。

初診日のカルテがない場合はどうする?

初診日を特定する

終診から5年以上経過して、初診日の病院にカルテがない場合どうすればいいのでしょうか?この場合「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出すると同時に、2番目の医療機関、ダメなら3番目の医療機関と古い順に確認して最も古い医療機関の「受診状況等証明書」を提出するとされています。この最も古い医療機関の「受診状況等証明書」により、具体的な初診日が確認できるのであれば、初診日として認められる可能性があります。
図解すると次のようになります。

国民年金・厚生年金保険障害給付(障害厚生)受付点検事務の手引

また、受診状況等証明書が用意できない場合は、初診日を確認するうえで、次のものを参考資料として「受診状況等証明書が添付できない申立書」に添付して提出する必要があります。

  1. 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳
  2. 身体障害者手帳等の申請時の診断書
  3. 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
  4. 交通事故証明書
  5. 労災の自己証明書
  6. 事業所の健康診断の記録
  7. インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー
  8. 健康保険の給付記録(健康保険組合や協会けんぽ)
  9. 次の医療機関への紹介状
  10. 電子カルテ等の記録(氏名・日付・傷病名・診療科が印字されたもの)
  11. お薬手帳、糖尿病手帳、領収書、診察券(可能な限り診察日や診療科がわかるもの)
  12. 第三者証明※(原則複数枚医療従事者であれば1枚、原則2枚以上)

※・親戚(三親等以内の親族以外)
・知人、上司、民生委員、友人、医療従事者
・初診のころの受診について実際に把握している人

しかし、上記の資料を提出しても、必ず初診日として認められるわけではありません。信頼性のある事実を積み上げて証明する必要があります。この中でも、医師や看護師などの医療従事者による第三者証明は信頼性が高いと言われていますが、提出してみないとわからないところがあるのが事実です。
ある程度の事実を積み上げたのであれば、初診日として認めるかどうかは年金事務所の相談員ではなく、新宿の障害年金センターにおいて審査する職員ですので、年金事務所で不受理というのは間違っていますので、受理はしてもらいましょう。

一定期間に初診日があることを証明する

初診日がピンポイントで特定できなくても、諦めるのはまだ早いです。保険料を納めている期間で初診日があることを証明できれば、初診日として認められるケースもあります。

例えば、10年前に、厚生年金に3年間加入していた時期があり、その3年の間に初診日があるという証拠があれば、その厚生年金期間が初診日として認められる可能性があります。

具体例:会社に入社して1年後に受けた健康診断でレントゲンを撮っていたが異常の指摘がなく、入社3年目に咳がとまらないので近所のA病院を受診し肺がんが見つかり、退職前にB病院に転院した。請求時にB病院にカルテがあり退職前に肺がんになった記述が残っている。
この場合、A病院が廃院していてカルテがどうしても見つからない場合でも、会社の健康診断結果とB病院のカルテを証拠として提出できれば、厚生年金期間に初診日があると認められる可能性が高いです。

このように、ピンポイントで初診日を見つけられなくても、保険料を納めていた一定期間に初診日があると証明できれば、初診日が証明できます。図解すると下図のようになります。

まとめ

障害年金の初診日について解説してきましたが、簡単そうですが、証明することが難しいケースがあるのが初診日です。初診日により、受給資格がなかったり、障害厚生年金が障害基礎年金になったりするケースもあります。そうなると、障害年金の受給の可否や年金額に大きな影響を与えます。
初診日の病院が廃院していたり、5年以上経過してカルテが破棄されていた場合は、障害年金の初診日を証明する「受診状況等証明書」をとるのが難しくなるケースもあります。しかし、難しいから諦めるのではなく、可能性を一つ一つ探っていくことが大事になります。多くのケースでは、なんらかの手がかりが見つかります。
このようなケースでは、知識のない方ではなかなか先に進まないと思うので、障害年金が得意な社会保険労務士に任せるというのも選択肢に入れてもいいと思います。

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