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背景
近年の治療法や薬剤の進歩により、難治がんのステージ4でも長期生存される方がかなりいます。私は肺がん患者会の会ワンステップの顧問をしておりますが、有効性の高い新薬が2000年代にはいり数多く承認され、生存率が大きく伸びているのを肌で感じます。そのことにより、年金相談において今まではなかった相談が実際に何件かありました。
それが、がん患者の障害厚生年金と遺族厚生年金との関係です。初診日が厚生年金で若くしてがんになってしまった患者さんは関係してくる可能性がありますのぜひ読んでください。
遺族年金とは?
遺族年金には、障害年金と同じように基礎年金と厚生年金があり、被保険者であった方の初診日や亡くなった日が、国民年金被保険者か厚生年金被保険者かにより、一定の条件を満たす遺族が受け取れる年金が変わってきます。
基本的には遺族厚生年金が2階部分となり、1階部分の遺族基礎年金に上乗せして支給されます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者であった方が亡くなられたときに、その方によって生計維持関係にあった「子のある配偶者」または「子」が受け取ることができます
支給要件
次のいずれかを満たす必要があります。
- 国民年金の被保険者である間に死亡したとき。
- 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき。
- 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき。
- 老齢基礎年金の受給資格期間を満たした方が死亡したとき。
補足:保険料免除期間は保険料納付済み期間としてカウントします。
保険料納付要件
被保険者または被保険者であった方(1,2)の場合は、障害基礎年金と同じです。
①被保険者期間の3分の2以上保険料を納めていること
②直近1年間に保険料の未納がないこと
実務においては、まず、②の直近1年間の保険料を納めていたかを確認しましょう。②の要件を満たしていない場合に①の要件を確認すればいいと思います。
亡くなったときに国民年金の保険料をきちんと払っていればいいので、このページを見てくださるで、18未満の子供がいる場合は、遺族基礎年金の支給要件を満たしていることが多いと思います。
遺族基礎年金の遺族の範囲
- 子のある配偶者
- 子
子とは18歳の年度末までの生計を同じくする子供(20歳未満の障害のある子含む)をいいます。
遺族基礎年金の年金額
遺族基礎年金の額は障害基礎年金2級とほぼ同じですが、子が遺族基礎年金を受給する場合の加算は第2子以降について行い、子1人あたりの年金額は下記の年金合計額を子供の数で除した額になります。
遺族基礎年金 | |||
支給額 | 18歳の年度末までの子の加算 (20歳未満の障害のある子含む) |
||
1人・2人までの加算 | 3人目以降の加算 | ||
年間 781,700円 月額 65,141円 |
年間 224,900円 月額 18,741円 |
年間 75,000円 月額 6,250円 |
詳しい説明は日本年金機構HPをご覧ください
障害厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計維持関係にあった一定の遺族が受けることができる年金です。
受けとるためには、亡くならたれた厚生年金の被保険者であった方が支給要件を満たしている必要があります。
遺族厚生年金の簡単な説明します。
支給要件
次のいずれかを満たす必要があります。
- 老齢厚生年金の受給資格者が25年以上ある者が死亡したとき。
- 厚生年金の被保険者が死亡したとき(3分の2以上の保険料納付要件を満たしていること)
- 厚生年金の被保険者期間中に初診日がある傷病で、当該初診日から5年以内に死亡したとき。
- 1,2級の障害厚生年金を受けられる者が死亡したとき。(2,3,4の被保険者期間はみなし300月として計算します。)
※1〜4の複数に該当する場合、特に申し出がない場合の被保険者期間は2,3,4,のみなし300月を適用します
遺族厚生年金の遺族の範囲
亡くなったときに、その方によって生計維持関係にあった次の遺族
- 妻(30歳未満で子のない妻は5年で受給権消滅)
- 婚姻してない子または孫(18歳の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級が1,2級の者含む)
- 55歳以上の夫、父母、祖父母(支給は60歳から)
:ただし夫が障害基礎年金を受給している場合に限り、遺族厚生年金も合わせて支給される
(日本年金機構HP参照)
遺族厚生年金の年金額
・報酬比例の年金額の4分の3
(標準報酬額、被保険者期間の年数により変わってきますので、無料相談では概算の金額しかでお伝えできません。詳しくは基礎年金番号をご用意のうえ、年金事務所にお問い合わせください)
・中高齢寡婦加算:586,300円
・経過的加算
(詳しくは日本年金機構HP参照)
遺族厚生年金の支給要件
遺族厚生年金の支給要件について、深堀りしてみたいと思います。
障害厚生年金と関係があるのは4になります。
遺族厚生年金は次のいずれかを満たせば受給できる
1.老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき
国民年金期間と厚生年金期間を合わせて25年以上(免除含む)あれば満たすことができます。厚生年金の被保険者として働いていたことがあり、きちんと年金を納めてきた人なら45歳以上の方であればこの要件を満たすことができ、もし亡くなったとしても遺族厚生年金が支給されます。日本に在住していれば、20歳からすべての人が国民年金に加入します。この25年には学生免除等の免除期間は含まれますが、国民年金の保険料を払っていない期間は含まれません。老齢厚生年金の受給権者であっても25年以上の受給資格期間があれば、一定の条件を満たす遺族は遺族厚生年金を受給できます。
2.厚生年金の被保険者が死亡したとき
これはそのままですね。亡くなるときに会社に在籍してることが条件となります。籍があれば厚生年金の被保険者となるので、休職中でもかまいません。ただし、保険料を3分2以上納めている保険料納付要件は障害年金と同じようにあります。
3.厚生年金の被保険者期間中に初診日がある傷病で、当該初診日から5年以内に死亡したとき
これは、保険料納付要件を満たしていて、亡くなるときに会社に在籍していないが、初診日から5年以内に亡くなっていれば遺族厚生年金が支給されます。逆に言えば、退職後、初診日から5年を超えてなくなったときはこの要件を満たすことができません。
例えばですが、初診日から5年間はなんとか治療と仕事を両立しながら働いていたが、初診日から5年経過後に退職して、その翌日に亡くなったときは、この要件を満たすことができません。
初診日に厚生年金被保険者として働いていた方でも、会社を辞めてから、45歳までに亡くなってしまったら、遺族厚生年金をもらえない可能性が出てくるわけです(1の受給資格、被保険者期間25年を満たさないため)。
4.1,2級の障害厚生年金を受けられる者が死亡したとき
会社を辞めてしまい厚生年金の被保険者でない人で、初診日から5年を超えて生きている人の場合、障害等級1,2級の障害厚生年金の受給権者が亡くなった場合は、この要件を満たすことができ、一定の条件を満たす遺族が、遺族厚生年金を受給できます。この場合、保険料納付要件は問われません。
厚生年金法58条において遺族厚生年金の支給要件はここまでですが、H25年の通達で、「3級の障害厚生年金の受給権が死亡した場合であって、直接の死因の傷病と障害厚生年金の支給事由となっている傷病とが相当因果関係にあるときは、2級以上の障害状態にあったとみなし、遺族厚生年金の支給要件に該当するものと扱う」と明記されました。
がんが進行して亡くなった場合は直接の死因とがんとの相当因果関係は認められる可能性が高いです。そのため、がんにより障害厚生年金3級を受給している方が亡くなった場合は上記に該当します。
よって、障害厚生年金の1,2,3級の受給権者が亡くなった場合、死亡時に厚生年金の被保険者でなく、初診日から5年を超えていたとしても、遺族厚生年金が支給されるということになります。
まとめ
治療法や薬剤の進歩により、難治の進行がんであっても、初診日から5年を超えて生きている方も珍しくなくなってきました。しかし、まだ、すべてのがんが治るわけではありません。ここまで書いてきましたが、働いていて初診日が厚生年金被保険者であるにもかかわらず、亡くなったときに退職しており、初診日から5年を経過しているので遺族厚生年金が支給されないといった相談を受けたことがあります。がんの障害年金は事後重症が多いです。事後重症請求は認定日請求と違い亡くなってからでは請求できません。私が受けた相談において、仮に亡くなる前に障害厚生年金3級以上が認めれていたのであれば、亡くなったあと、遺族の方は遺族厚生年金が受給できました。
45歳以下で亡くなる患者さんにおいては、残念ながら、このようなケースになってしまうことがあります。45歳以下であれば、結婚して子供がいる家庭も多いと思います。私の場合、35歳のときに、子供が産まれて3ヶ月という時期に、がんと診断され、医師からは「これからおこなう治療は延命のためのものです。時間を大切にしてください」と言われました。そんなときに1番に考えるのは家族の未来です。妻と子供がちゃんと生活していけるのかということでした。
私は家族が路頭に迷うことがないようにできる限りのことをしてやりたいと思いました。もし仮に死んだとしても、遺族厚生年金がもらえるのともらえないのでは、その後生活が大きく変わってきます。
「がんでの障害年金は早い段階での無料相談が重要」においてがんでの障害年金、早期相談の重要性に触れております。がんは進行性の病気のため、がんでの障害認定基準を満した場合に障害年金の請求がスムーズにできるよう、早い段階から患者さんをサポートするためです。障害状態に該当していない状態でも将来、障害状態に該当する可能性があると思われる患者さんは、ぜひ早めに無料相談をご利用ください。早期相談をされる方は無料相談を複数回実施させていただいております。
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