「障害年金業務統計(令和元年度決定分)」という資料が日本年金機構より公表されました。いままで新規裁定請求や更新請求の申請数と傷病別申請数、それに対する支給・不支給決定の数は公表されてきませんでした。この数字を公表してこなかったことが不思議ですが、とある国会議員の要望により、2020年9月10日に厚生労働省・社会保障審議会年金事業管理部会にこの統計が提出され、このほど一般に公開されました。初めて見る統計なので、興味深いものでしたが、この「障害年金業務統計(令和元年度決定分)」はがん患者が障害年金を受給することの難しさを浮き彫りにしたものとなっています。
このページの目次
障害年金業務統計について
新規裁定における決定区分
新規裁定とは、新たに障害年金を申請することです。制度として障害基礎年金は1.2級のみだけですが、、障害厚生年金は障害の程度がもう少し軽い3級があります。
再認定における決定区分
再認定とは、新規裁定請求が認められた障害年金受給者が更新請求をして、認められることです。一度障害年金の申請が認められる、更新請求も認められることが多いのがわかります。ちなみに、障害年金は更新手続の必要ない永久認定と更新手続きが必要な有期認定にわかれます。さらに、有期認定の場合は病状により1年〜5年以内に更新が必要となります。がんでの障害年金の場合は、障害状態が変わることがあるので1年か2年で更新日をむかえる受給者が多いです。
診断書種類別支給件数
がんでの障害年金の診断書は「血液・造血器・その他」の診断書を使います。障害基礎年金・障害厚生年金合計の新規裁定を見ると、「血液・造血器・その他」で支給決定されたのはわずか3.7%とかなり低いです。もちろん「血液・造血器・その他」の障害のすべてが、がんというわけでなく、がんはその中の半数ぐらいではないかと「年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)平成26年」から推測できます。前回の記事でも書きましたが、精神障害・知的障害や外部障害である肢体の障害に比べ、内部障害であるがんを含む「血液・造血器・その他」診断書の支給決定数が極端に低いことがわかります。
障害年金業務統計からがん障害年金を考察
障害別支給決定数
内部障害として分類されるものが「呼吸器疾患」「循環器疾患」「腎疾患・肝疾患・糖尿病」「血液・造血器・その他」になります。「腎疾患・肝疾患・糖尿病」が7%と比較的高くなっているのは、人工透析をしていれば障害年金2級がほとんど認められるので、請求数、支給決定数も多くなっていると考えられます。
新規裁定の審査結果
障害基礎年金・障害厚生年金合計の令和元年度、新規裁定件数は合計で104,628件でした。その審査の内訳は上記となっており、新規裁定請求をした87.4%が1,2,3級のいずれかに該当しており、非該当(不支給)はわずか12.4%となっています。
3級がない障害基礎年金においても、1.2級のどちらかに該当しているのが85.4%となっていて、非該当(不支給)は14.6%となっています。この結果を見る限り、障害年金は申請すれば高い確率で受給できています。
がんの新規裁定の審査結果
がんの診断書は「血液・造血器・その他」診断書を使います。がん(悪性新生物)は「血液・造血器・その他」診断書の半数ぐらいと推測できることはさきほど書きました。
がんを含む「血液・造血器・その他」診断書の障害基礎年金・障害厚生年金合計の審査結果は非該当(不支給)が29%となります。全体での非該当(不支給)が12.4%だったので、「血液・造血器・その他」診断書の非該当の割合が多いことがわかります。
さらに3級のない障害基礎年金での「血液・造血器・その他」診断書の非該当は47%と半数近くになります。障害基礎年金全体での非該当が14.6%だったことを考えると、がんで障害年金を受給することの難しさがわかります。
まとめ
ここまでがんで障害年金を受給することの難しさを書いてきましたが、やはりこのままではいけないと思います。がんで亡くなるかたはどの年代でも多いことは「がんと障害年金、年齢階級別に見たがん(悪性腫瘍)亡くなる人の割合」で書きましたが、「亡くなるかたが一番多いのに、障害年金の受給者が少ないのはおかしいと思います。
わたしは肺がんのステージ4で障害年金2級をもらっていました(現在は支給停止中)。もし仮に年金をもらう前に亡くなってしまう可能性がある難治がんステージ4の患者であれば障害状態になったときには、生きているうちに少しぐらいもらっていてもいいのではないでしょうか?使えるお金があれば、自分がやりたいことをできるかもしれません。使えるお金があれば、がん患者のQOLもあがるはずです。
運良く生き残ることができている身として、障害状態にあるがん患者が障害年金を請求しやすい環境を作り、障害年金を受給できる社会になる手助けができればと思います。
がんでの障害年金受給が難しい理由はこちらにあります。
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