仕事をしている人ががんになったとき必ず生じる問題が、治療と仕事の両立です。がんといっていも、罹患する部位、ステージ、治療内容等により、仕事にどの程度支障をきたし、罹患時の年齢、役職、雇用区分(正規・非正規)によりどのような支援がうけられるかは人それぞれ異なります。一方で、企業においては、従業員ががんになったときどのような支援をしていくかは、各企業ごと異なります。それぞれのがん患者がおかれた状況は千差万別であり、その個々がおかれた状況に即して、両立支援をする必要があります。両立支援について、がん患者、社会保険労務士、両立支援コーディネーターとしての視点から説明していきます。

がん患者の就労支援体制

近年、がん患者の就労支援を積極的におこなう企業が増えてきています。その背景には、がん患者の就労が社会問題化しているからです。そのため、国は平成18年に「がん対策基本法」を制定し、がん患者が治療と仕事の両立ができる環境を整えようしています。

背景

地域がん登録全国推計による年齢別がん罹患者数データによれば、平成24年(2012年)において、がん患者の約3人に1人は、20歳〜64歳までの就労可能年齢でがんに罹患しています。
また、医学の進歩により、全がん種における5年相対生存率は年々上昇しており、国立がん研究センター、がん対策情報センターによると、2009年〜2011年にがんと診断された人の5年相対生存率は男女計で64.1%(男性62.0%、女性66.9%)となっており、2000年〜2002年が58.6%、2003年〜2005年が62.1%、2006年〜2008年が62.1%と比較しても、がん患者・経験者が長期生存し、働きながらがん治療を受けられる可能性が高まっています。
このため、がんになっても自分らしく活き活きと働き、安心して暮らせる社会の構築が重要となっており、がん患者の離職防止や再就職のための就労支援を充実させていくことが強く求められています。

国の就労支援

我が国のがん対策は、2007年(平成19年)に、がん対策基本法が施行されました。このがん対策基本法は、国民の2人に1人がかかると言われているがんという病気に対して、国としての対策を定めた法律です。がん医療の発展や、医療の地域差の是正、がん検診の強化など、その施策は多岐にわたります。

就労支援については、がん対策基本法第20条に定められています。

国及び地方公共団体は、がん患者の雇用の継続又は円滑な就職に資するよう、事業主に対するがん患者の就労に関する啓発及び知識の普及その他必要な施策を講ずるものとする。

がん対策基本法では、がん対策を総合的かつ計画的に推進するため、国は「がん対策推進基本計画」を策定することが定めれており、「がん対策推進基本計画」において、就労支援について現状の取り組みや課題、取り組むべき施策が報告されています。「がん対策推進基本計画」は、第1期が2007年〜2011年度(平成19年〜23年度)、第2期が2012年〜2016年度(平成24〜28年度)、第3期が2017年〜2022年度(平成29〜令和4年度)となっています。
「がん対策推進基本計画」において、がん患者の就労支援は第2期以降、大きなテーマとなっており、国の施策としてがん患者が働きやすい社会を目指しているのが現状の取り組みです。

第2期がん対策推進基本計画におけるがん患者の就労

がん患者の就労を大きなテーマとしてあげたのは、第2期がん対策推進基本計画からです。その対策は次のようになっています。

がん患者のおかれている状況と就労や就労支援に関する現状について(厚生労働省)

第3期がん対策推進基本計画

平成29年度〜令和4年度までの「第3期がん対策推進基本計画」では、がんとの共生というテーマの中で次のように取り上げられています。

第3期がん対策推進基本計画(厚生労働省)の就労支援として注目すべきところは、トライアングル型サポート体制」の構築です。「トライアングル型サポート体制」とはがん患者の治療と仕事の両立を社会的にサポートする仕組みを整えるため、主治医等、会社・産業医及び患者に寄り添う「両立支援コーディネーター」によるトライアングル型で患者をサポートする体制のことであり、平成29年3月の「働き方改革実現会議」で決定された「働き方改革実行計画」において、構築が定められた制度です。
ちょっとややこしいですね。もう少し簡単に説明しますと、がん患者が安心して働けるよう、「両立支援コーディネーター」が、がん患者に治療と仕事の両立プランの作成支援をし、主治医と企業側との調整役として間に入ってもらい、個々の患者ごとに個別の事情を把握して、がん患者の治療と仕事の両立のためにベストなサポートができる仕組みを作ろうというものです。

「両立支援コーディネーター」とは治療と仕事の両立に向けて、医療や心理学、労働関係法令や労務管理等両立支援に関する基礎的な知識や考え方等の一定の研修を受講しており、患者、主治医、会社・産業医などのコミュニケーションが円滑に行われるように支援する者とされております。

ままでは、患者、主治医、企業側の3者連携がうまくいかず、医師の視点での患者の病状やできる労働内容の範囲、それに基づいた患者の就労に対しての希望、企業側としてがん患者に求める労働内容が一致せず、結果として、がん患者の就労を難しくする一因となっており、それが患者に必要以上の負担を強いてきました。それをこの「トライアングル型サポート体制」により解決することを目的としてます。

国もがん患者の就労支援を社会問題として捉えているのがわかりますね。
でも、国がやろうとしていることはわかりますけど、現実とのギャップが生じている国の施策って多いですよね。例えば、プレミアムフライデーとか、もう誰も口にしなくなっています(笑)。
がん患者が治療と仕事の両立ができる社会になるように、私も努力していきたいと思います。

 

 

 

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